ServiceNow Japanは10月17日、都内でプライベートイベント「Now Forum Tokyo 2018」を開催した。併せてNTTコミュニケーションズと協業し、日本でのデータセンターの設置も発表している。
同イベントは、5月に米国ラスベガスで開催されたグローバルイベントの「Knowledge 18」での内容を日本向けに紹介するというのが基本的な位置付けだが、国内ユーザー企業からの講演者を多くそろえて情報発信を手厚く行うなど、国内イベントとしてものローカライズがしっかりと行われていた。同社の日本市場重視の姿勢は、国内でのデータセンター設置にも表われていた。
働き方改革の問題点とあるべき方向性
基調講演を行ったServiceNow Japan 社長の村瀬将思氏
基調講演に登壇したServiceNow Japan 社長の村瀬将思氏は、まず「働き方改革の現状」について来場者に問いた。「働き方改革に取り組んでいる会社から来られた方は?」という問いに、来場者のほぼ全員が手を挙げたが、次に「そのうち、働き方改革によって生産性が飛躍的に向上した会社の方は?」という問いには数人の手が挙がっただけだった。
もちろん、“飛躍的に”というところがポイントで、こう問われて自信を持って手を挙げる人はそうそういないと分かった上で尋ねているのは明白だ。それでも日本の働き方改革が、いわゆる「ブラック企業問題」などを背景に、労働時間の短縮や労働環境の改善に主眼を置いており、生産性向上を直接目指す活動にはなっていないことは間違いないだろう。
同氏はこうした状況を踏まえ、「今後国内の労働人口の減少が予測されており、かつ国際競争に勝ち抜いていくためには生産性の向上が必須だ」と語った。根強く残る長時間労働なども、時間当たりの生産性の低さとセットになっている面があると思われだけに、同氏が提唱した生産性向上が、さまざまな問題を解決するための重要なポイントであることに異論はないだろう。
生産性向上に関して同氏およびServiceNowからの提起は「自動化の実現」だ。同氏は、自動化を「限られた人数で価値を生む手段」と位置付けた上で、望ましい自動化が満たすべき3つの条件として「自動ワークフロー」「汎用性」「従業員体験」を挙げた。
「Now Platform」の概要
自動ワークフローとは、別の表現で言えば「エンド・ツー・エンドの自動化」という意味である。一連のワークフロー内の一部だけを自動化できたとしても、自動化されていない他の処理がネックとなって、自動化のメリットが得られないことになる。このため、“全てが自動化される”ことが重要だという指摘だ。
次いで汎用性は、部門/部署の違いや既存の他システムなどとの連携が重要という意味であり、先のエンド・ツー・エンドとほぼ同じ意味で、視点の軸が変わったものと考えて良いだろう。いずれも、網羅的に自動化を実行することが重要という意味だ。そして、最後の従業員体験とは、サービスを提供する側の視点だけで自動化するのではなく、サービスを使う側(一般従業員)の視点でメリットがある自動化にすることが重要という指摘になる。さらに、こうした自動化を実現するには適切なプラットフォームが必須とし、それが、同社の提供する「Now Platformである」というのが村瀬氏の講演骨子となった。
ServiceNow DevOps担当シニアバイスプレジデント兼エンジニアリング担当責任者のPat Casey氏
続いて登壇した米ServiceNowのDevOps担当シニアバイスプレジデント兼エンジニアリング担当責任者のPat Casey氏は、創業直後の社員数がまだ一桁だった時代からという同氏の経歴を踏まえて創業のエピソードなどを紹介し、同社のDNAとして「“仕事を片付けたい人”と、その人達のために“サービスを提供する人”との間にあるギャップを埋めることがわれわれの仕事だ」とした。また、同社の文化として「自己満足に陥らず、常に改善を目指すこと」なども紹介した。
ユーザー企業の講演では、アフラック生命保険 常務執行役員 チーフ・インフォメーション・オフィサー(最高情報責任者)の二見通氏が登壇。同社が20年以上に渡って社内の情報共有ツール兼簡易ワークフローツールとして使い続けてきた、“老朽化した”グループウェアをServiceNowでリプレースした経緯について紹介した。
アフラック生命保険 常務執行役員 チーフ・インフォメーション・オフィサーの二見通氏
同氏は、「長年カスタマイズを繰り返し開発してきたグループウェアでも移管はできる」とする一方、新たな方針として打ち出した「カスタマイズは絶対にさせない」という方針が社内にあつれきを生み、「心が折れてしまった担当者も数人いる」と語るなど、リアリティが伝わってくる話を展開した。その上で、「変化は自然に起こらない、待っていても起こらない、自ら起こす」とのメッセージで締めくくった。まさに、働き方改革に取り組む多くの企業の担当者に向けた言葉と受け止められるのではないだろうか。
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