ITサービス管理などの機能をSaaSで提供するServiceNow Japanは6月1日、「Jakarta」と呼ばれる最新バージョンを7月18日にリリースすると発表した。機械学習技術でサービス管理の品質改善を支援する「Intelligent Automation Engine」やセキュリティ管理、クラウドサービス管理などの新機能を導入する。
Intelligent Automation Engineでは、主に異常予測、インテリジェンス、ベンチマーク、パフォーマンス予測の4つの新機能を提供する。

ITサービス管理の向上に機械学習技術を取り入れる
異常予測機能では、システムの動的な情報や過去の障害情報をもとに、ITサービスの障害や停止につながりかねない兆候をアルゴリズムで把握し、事象の発生を未然に防ぐワークフローを自動的に実行する。インテリジェンス機能では、過去のパターンもとに社内ユーザーなどからのリクエストへの対応に伴うリスクを評価し、適切な担当者にタスクを割り当てることができる。
ベンチマーク機能では、サービス提供における業務効率などを測定して、自社と類似した業種や規模の企業と比較することにより、サービス提供の品質などを客観的に評価できるという。パフォーマンス予測では、サービス提供部門が事前に設定した目標やデータプロファイルから、目標達成の時期などを高い精度で予測できるとしている。
また、最新バージョンではセキュリティやリスク管理の「Trusted Security Circles」「Vendor Risk Management」、パブリッククラウドサービス管理の「Cloud Management」も追加する。
Trusted Security Circlesでは、自社のセキュリティ製品が検知したアラートやイベントなどの情報と、セキュリティベンダーなどが発信する脅威分析情報などを集約し、発生したインシデントの詳しい分析や、対応作業の管理などができる。一方、Vendor Risk Managementでは自社で新たに採用するベンダーなどのリスクを自動的に評価する。Cloud Managementでは、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、VMwareなどを利用するためのサービスカタログをIT部門が数分程度で作成して社内に展開し、サービスの利用状況やコストなどを管理できるようになるという。
ITサービス管理のSaaSから拡大

ServiceNow Japan 社長の村瀬将思氏
同日の記者会見でServiceNow Japan 社長の村瀬将思氏は、2016年の売上高が前年比44%増の約10億3900万ドルに達したと報告。人員規模も村瀬氏が就任した2016年1月から1年余りの間に1000人以上増え、全体では約5200人に拡大した。
村瀬氏によると、業績拡大の背景には契約更新率が97%という安定した顧客基盤に加えて、近年はヘルプデスクなどのITサービスからサイバーセキュリティなどの隣接領域、さらには人事管理やカスタマーサポートなどにもユースケースが広がり始めたことがあるという。
「企業のデジタル変革とは、要は優れたサービス化への取り組みだ。ITサービスを提供してきたIT部門にはそのリード役が強く求められている。当社もそれに応じて拡大している」(村瀬氏)
国内の導入事例では、ネットアップやベネッセインフォシェル(ベネッセホールディングスとラックの合弁会社)がITサービス管理に採用するほか、GREEでは新入社員向けの入社手続き業務の管理にも利用しているとのこと。ゲストスピーカーとして登壇したパロアルトネットワークス シニアプロダクトマーケティングマネージャの広瀬務氏によれば、海外ではServiceNowを利用して、1人から数人規模のセキュリティ監視センター(SOC)を自前で運用する企業もある。
このため、4月にはeBayの最高経営責任者(CEO)を務めたJohn Donahoe氏を会長兼CEOに招請。従来のIT部門顧客に加え、経営管理や事業部門など非IT部門の新規顧客を取り込むべく、同氏が持つコンシューマービジネスのノウハウを経営戦略に生かしていくとしている。

ITサービスの品質向上がデジタル変革の一例と村瀬氏