松岡功の「今週の明言」

アカマイ新社長が語る「サイバーセキュリティーに求められる進化」

松岡功

2019-05-24 10:13

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、アカマイ・テクノロジーズの山野修 職務執行者社長と、インテルの鈴木国正 代表取締役社長の発言を紹介する。

「サイバーセキュリティはクラウドやネットワーク上での対策が重要」
(アカマイ・テクノロジーズ 山野修 職務執行者社長)

アカマイ・テクノロジーズの山野修 職務執行者社長
アカマイ・テクノロジーズの山野修 職務執行者社長

 アカマイ・テクノロジーズが先頃、今後の事業戦略について記者説明会を開いた。2019年3月1日付で同社の社長に就任した山野氏の冒頭の発言は、その会見で、自らの転身の理由を説明する中でサイバーセキュリティーについての見解を述べたものである。

 同社の親会社である米Akamai Technologiesは、世界139カ国に展開する24万台以上のサーバー群によって構成される独自の分散型コンテンツ配信ネットワーク(CDN)「Akamai Intelligent Platform」を通じて、オンライン上のコンテンツやアプリケーションの配信を高速に行うサービスを提供している。

 2018年12月期のグローバル売上高は前期比8%増の27億ドル。日本法人の売上規模は公表していない。現在、注力している事業は、コンテンツを配信する「メディア」、ウェブサイトのパフォーマンスを向上させる「ウェブパフォーマンス」、クラウドサービスとして提供している「セキュリティ」の3分野である。

 山野氏によると、日本法人における2015年から2018年までのこれら3事業の割合の推移は、図に示したようにセキュリティー事業がとりわけ急成長しており、全売上高としても3年間で倍増したという。今後の事業戦略の詳細については関連記事をご覧いただくとして、ここでは同氏が自ら語った転身の理由について記しておこう。

図:アカマイ・テクノロジーズ(日本法人)における2015年から2018年までの3事業の割合の推移
図:アカマイ・テクノロジーズ(日本法人)における2015年から2018年までの3事業の割合の推移

 これまでRSAセキュリティ(現Dell EMC)やマカフィーの日本法人などで社長を歴任し、およそ20年間、セキュリティー市場を牽引してきた同氏の目から見て、Akamaiは米マサチューセッツ工科大学(MIT)発のベンチャーとして創業した当時から、その優れた技術に注目していたそうだ。

 また、最近ではウェブパフォーマンスやセキュリティー事業も伸長しており、特にサイバーセキュリティーにおいてクラウドやネットワーク上での対策に注力している点に着目。そうしたところへ社長就任の要請があり、転身を決めたという。冒頭の発言はこうした話の流れから抜粋したものである。

 筆者は十数年前から山野氏に取材を重ねてきたが、10年ほど前に聞いた以下の話が今も印象深い。

 「セキュリティー、サーバーインフラ、システム運用管理の垣根がなくなってきつつある。このところ、サーバーベンダーがシステム運用管理ソフトベンダーを傘下に収めたり、セキュリティーベンダーがシステム運用管理ソフト事業に乗り出したりしている。クラウドやネットワークでそれらの連携を深めていけば、今後の強力な差別化戦略になるかもしれない」

 当時のこの話を照らし合わせても、今回のアカマイ社長就任は「筋が通っている」と感心した次第である。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]