米国は6月末のG20大阪サミットで、華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置を見直す考えを示した。だが、5月には米国がファーウェイを排除する動きを見せたことで同社は主に西側市場で打撃を受け、売上高が最大で300億ドル(約3兆3000億円)に減少する可能性があるとしていた。そうした中、ファーウェイはこれまで、ほかの地域での取り組みも強化してきた。
そのような地域の1つが東欧だ。ファーウェイはバルカン半島で安全・スマートシティソリューションから、通信情報分野への大型投資、バルカン半島の若者を対象とした教育プログラムまで、さまざまなプロジェクトを進めている。
この地域におけるファーウェイの活動は、低所得国が多いバルカン諸国に大規模なインフラプロジェクトやエネルギー開発プロジェクトをもたらす、中国政府の「一帯一路構想(BRI)」を補完するものだと考えられている。
バルカン諸国の多くは、欧州連合(EU)への加盟交渉を行っているが、まだ多数が加盟できておらず、当面の間はその見込みもない。これまで、その間隙を中国が埋めてきた。
この地域で中国政府が特に力を入れているのは、西バルカン地域でもっとも影響力が大きいとされることが多いセルビアだ。
ファーウェイとセルビア政府の協力関係は、両者が協力覚書を交わした2014年にまでさかのぼる。
さらに2017年には、ファーウェイとセルビア内務省の間で、同国の首都であるベオグラードでの「セーフシティ」プロジェクトの推進などに関する戦略的協力合意文書が交わされている。
このプロジェクトの導入は、セルビア市民の間にプライバシーに対する大きな懸念を引き起こした。もっとも大きく取り沙汰されているのは、個人情報の処理と、なぜ人権に対する影響の評価が事前に行われなかったかという点だ。
西側諸国は、ファーウェイのプライバシーを侵害する傾向が強い技術について懸念しているが、そのことはセルビア当局の考え方を変化させてはいないようだ。
また最近では、セルビアの関係機関が中国企業との間で同国の一般道路や高速道路へのスマート技術の導入に関する議論を始めた。さらにファーウェイは、同国に西バルカン地域のデジタル変革を支援するイノベーションセンターを設置する計画を発表している。
同社が最近この地域で立ち上げたプログラムには、「One Thousand Dreams」(千人の夢)と呼ばれる教育プログラムがある。ファーウェイによれば、このプロジェクトは中東欧の若者のデジタルスキルを向上させ、若者がデジタル技術の恩恵を受けられるように支援するものだという。