インテルは、日本のPC市場における取り組みについて説明会を開き、CPUの供給不足や今後のPC市場の見通しについて言及した。執行役員 パートナー事業本部長の井田晶也氏は、「働き方改革の広がりや、小学校におけるプログラミング教育の開始、ゲーミングPCやクリエイターPCなどへの注目が高まることで、2020年以降は健全かつ安定的なPC市場になるだろう。新たなビジネス機会の創出に向けて新たな技術を活用しながら、拡大するトレンドを先導していくことになる」などと語った。
インテル 執行役員 パートナー事業本部長の井田晶也氏
2019前半まで続いた同社製CPUの供給不足については、「第3四半期以降は需要総量に対して生産総量が追い付くと見ている。需要を満たすことができるだろう」(井田氏)としながらも、「総量としては供給できても、モデルミックスの観点から捉えると、その全てをいつまでに満たすことができるかどうかについては目処が立っていない」とした。同社ではCore i7やi9、Xeonなどの高性能CPUを中心とした生産量の拡大を進めている。
一方で同氏は、「Project Athena」についても言及。「世界最先端のノートPCを生み出すためのインテルによる新たなアプローチとなり、新たなワークスタイルに最適化したノートPCが投入されることになる。2020年後半には、このコンセプトに沿ったノートPCがPCベンダーから登場するだろう。これによって、2020年以降のPC市場を盛り上げていくことになる」とした。
国内PC市場は、法人向けPCに関して前年比50%増という高い成長率を維持する一方、個人向けPCは前年並みか前年実績を下回る形で推移している。
Project Athenaのコンセプト
井田氏は、「PC市場全体は法人向けの堅調ぶりに支えられて前年実績を上回っており、2020年1月のWindows 7のEOS(サポート終了)に向けた需要が爆発的になっている。これが落ち着いた際にはどうなるか。Windows XPのEOSの際にはぎりぎりに需要が集中して、その後の反動が大きかったが、今回は長い時間をかけて新たな環境への移行が進んでおり、XP時ほどの大きな反動はない。その点では安定しているといえる」とした。また、「ワークスタイルやライフスタイルが変革するなかで、PCの役割が再認識されている。そこに向けてわれわれがより具体的な提案をしていくことで、PC市場を健全にしていくことができる」などと発言した。
同氏は、なかでもワークスタイルを変革させるための動きが増えているとした。働き方改革関連法が順次施行されているほか、2020年の東京五輪開催時に、会社の場所によっては通勤に課題が発生することが指摘されいるとし、これもワークスタイル変革を後押ししていると見る。「いつでも、どこでも利用できるモダンデバイスを活用して時間と場所を問わない働き方が求められている。これは、オフィス中心から人中心の働き方への変化であり、『PC=職場』という状況が生まれている」と述べ、ワークスタイル変革がPCの新たな使い方を提案し、需要を下支えするとの見方を示した。
また文教市場については、プログラミング授業の必修化や、2025年度に向けて1人1台のPCが整備されること、個人向けPC市場については、ゲーミングPCの広がりや、eスポーツブームの到来、高性能CPUを搭載したクリエイターPCが注目を集めていることなどに触れた。
一方で、「将来のライフスタイルやワークスタイルがどう変化するかが把握し切れていないということはネガティブ要素になる可能性もある。この変化を常にウォッチすることで、柔軟に対応した提案をしていきたい」と話した。また、日本ではPCの買い換えサイクルが7.0年と長期化している点が懸念材料だとした。
その上で、「日本の個人ユーザーはハイエンドCPUを使っていることが背景にある。最新CPUによるイノベーションは大きなものがあり、それを使うことによる利点を紹介し、買い換えを促進したい。特に地方都市の買い換えサイクルが長期化しており、ここでは、地方創生に関連させたICT活用の促進、中小企業における買い換えの提案、地方の文教市場における最新PCの導入促進を契機に、地方でのイベント開催などを通じて買い換えの促進を図りたい」などと述べた。
第10世代Coreプロセッサーファミリーの方向性
インテルはProject Athenaに取り組んでおり、そのコンセプトに沿ったノートPCが2019年後半から登場することに加え、新たな第10世代の「インテル Coreプロセッサーファミリー」では、「Deep Learning Boost」を搭載したり、Wi-Fi 6に対応したりするほか、4K HDRにも対応していることなどを挙げた。インテリジェントなパフオーマンスと高度なエンタテイメント体験、最高の接続速度を実現した薄型、軽量のノートPCの可能性を再定義できるという。
また井田氏は、“ハイパーパーソナライズ”化が進展し、アプリケーションが個人利用に最適化した究極の体験を提供したり、「DaaS(Device as a Service)によってサブスクリプション型でPCを購入したりできる仕組みが広がり、個人ユーザーの需要を顕在化できると指摘した。