サイバートラストは7月9日、IoT事業に関する戦略説明会を開き、IoT機器の長期利用を支援する新サービス「EM+PLS(エンベデッドプロダクトライフサイクルサービス)」を2019年秋から提供すると発表した。併せて同サービスの主要な構成要素とするLinuxの組み込み向けOS「EMLinux」の試用版の提供を同日に開始した。
「EMLinux」の概要
EMLinuxは、Linux FoundationのCivil Infrastructure Platform(CIP)プロジェクトが開発するLinuxカーネルをベースに、同社がDebianベースのパッケージを組み合わせて提供するもの。パッチ提供など10年間のサポートをコミットするという。リアルタイムOS(RTOS)と共存を図れるよう開発し、ファクトリーオートメーション(FA)分野などの製造業向けに最適化するとしている。
EM+PLSは、同社の「Secure IoT Platform」サービスをベースに、半導体などに設ける保護領域への識別情報(固有鍵)の書き込みや証明書のインストール、署名検証、失効といった運用をリモートで行えるようにするサービスで、半導体メーカーなどへの提供を想定する。同日付で技術パートナーの東芝デバイス&ストレージが、EM+PLSに対応した半導体の設計開発やサービス提供に向けて検討を開始することを明らかにした。
「EM+PLS」におけるサービスのイメージ
また、同サービスでは人工知能(AI)を利用して、組み込み機器向けソフトウェアなどの脆弱性検査やパッチ管理、コンプライス確認などの機能を提供するクラウドサービスも予定する。煩雑になることが見込まれる人による作業や管理の省力化を図るとしている。
ハードウェアベースのセキュリティ技術は企業向けサーバやPCなどのIT製品では既に導入されているが、今後は製造装置などに適用を広げるという
記者会見したサイバートラスト 副社長 執行役員の伊東達雄氏は、同社のIoT事業戦略において、製造業顧客が製品の差別化を図る領域に注力できるようセキュリティなど基盤に当たる領域にソリューションを提供すると説明。FAやIoTなどの機器は、運用期間が10年以上とITシステムに比べて長く、合わせてサイバーリスクへの懸念を背景に、設計開発段階のセキュリティの確保が求められているとした。
EM+PLSでの具体的なサービス内容や料金などは改めて発表するといい、それまでの間に技術パートナーら具体的なビジネスモデルや技術課題などについて検討を進めていくとしている。