AIモジュールで肺生検の負担軽減、診断精度を向上へ

Greg Nichols (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2019-08-15 06:30

 医師が患者の肺に病変や結節があると疑った際には、CT検査を実施するのが一般的だ。そして病変が見つかると、正確な診断を下すとともに、その病変が良性か悪性かを見極めるために生体検査を勧める場合がしばしばある。

 生体検査は日常的に実施されているものの、技術を要し、医療過誤の事例も少なからずある。まず、画像診断では偽陽性となり、患者に不必要な負担をかけてしまう場合がある。また、医師が生体検査を実施する際には、肺組織の周辺部位に誤って損傷を与える可能性もある。さらに、画像に病変が鮮明に写っていないために誤診してしまう場合もありうる。

 画像撮影装置の性能向上も解決策となり得るが、装置の価格自体が高額になる。これに代わるソリューションが、人工知能(AI)を活用した画像処理による診断精度の向上だ。

 このアプローチを採っているのが、AIやコンピュータービジョン、画像処理テクノロジーを手がけるイスラエルの企業RSIP Visionだ。またこのアプローチは、コンピュータービジョンやロボティクスといったテクノロジーによって、肺の外科的手術の精度向上を目指す取り組みの一環ともなっている。

 同社が新たにリリースした肺のセグメント化モジュールは、セグメンテーションアルゴリズムと呼ばれる手法を使用し、胸部スキャン画像をその特徴によってピクセル群に分割できるようになっている。正確なセグメント化により、画像の特定部分や境界を容易にピンポイントできるようになるため、手術中の精度が大きく向上する。細い気管支を正確にマップ化することで、医師はそういった気管支を経由して病変部に到達できるようになるため、最小限の処置で生体検査を実施できるようになる。

 テルアビブ医療センターの後期臨床研修医であるRabeeh Fares氏は、「放射線医学の見地から述べると、この新しいAIモジュールはますます有効なツールになってきている。特に、臨床上重要だがこのモジュールなしには見過ごしてしまいかねない辺縁部の小さな病変や肺近位部の病変の発見に威力を発揮している」と述べている。

 この肺のセグメント化モジュールは、既存のスキャンテクノロジーを利用するソフトウェア環境にも統合できるようになっている。RSIPの他のモジュールには、整形外科や心臓学に有用なものもある。このようなAIモジュールは、既存の医療機器や画像撮影装置の精度向上をもたらすことでその価値を高められる。このため、RSIPの主要顧客として医療機器の開発メーカーが含まれている点に驚きはない。

 RSIPの創業者であり、最高経営責任者(CEO)でもあるRon Soferman氏は「われわれは、ナビゲーションのための必須ソリューションとしてこのテクノロジーを医療機器業界に提供している」と述べるとともに、「今日の市場には、先進的なテクノロジーを採用し、場合によってはロボティクスによる支援やインフラを用いている新たな企業も参入してきている。こうした企業、そして業界のすべての人々に対して、気管支のセグメント化を可能な限り最高の品質で提供することが、あらゆる医療処置を成功に導くうえで欠かせない要素となっている」と述べている。

 将来的には、AIを活用したセグメント化テクノロジーによって、他の部位のインターベンション処置を実施する際の誘導を支援できるようになるだろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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