米Pure Storageは、9月18日まで開催した年次イベントで多数の製品を発表した。オールフラッシュストレージでスタートした同社は創業10周年を迎えるが、ハードウェアの機能だけでなく、オンプレミスの従量課金「Pure as a Service」などビジネスモデル面でもパイオニアを自負する。同社インターナショナルCTO(最高技術責任者)のAlex McMullan氏に、新製品や今後の方向性について話を聞いた。
--Pure Storageは創業10周年を迎えた。世界市場と日本市場の成長をどう見ているか。
Pure Storageはオールフラッシュで成長を続けているが、ディスク市場は縮小している。2019年第2四半期にわれわれは28%増で成長したが、競合他社は前年同期比でマイナス成長となっている。日本、韓国、オセアニアが含まれるAPJは12~18%増で成長した。だが、日本は目覚しい成長を遂げている。
Pure Storage インターナショナルCTOのAlex McMullan氏
日本市場へ正式参入してから6年が経過するが、当社にとっては新しくも重要な市場であり、投資をしている。日本には製造、ヘルスケア/メディカル、自動車などの大手企業があるが、これらの業界はデータを生成、保存し、さらに分析しており、成長が見込まれる分野だ。一方で日本企業は、文化的に既存ベンダーとの関係が強く、われわれはまず信頼を獲得することが大切と考えて展開してきた。日本のローカルパートナーが重要な役割を果たしている。
パートナーは、当社の技術や優位性を代弁してくれるという点で重要だ。単に数を増やすだけではなく、文化的なフィットも重要だと考える。チャネルとディストリビューターに加えて、先に富士通クラウドテクノロジーズと提携した。初のマネージドサービスプロバイダー(MSP)になる。顧客が当社をどのように見ているのかを測定するという点で、われわれが最も重視しているのはネットプロモータースコア(NSP)だ。われわれはNPSが86.6で、業界で最も高いスコアを獲得している。
機能面では、日本の顧客からレプリケーション関連のリクエストを多くもらっており、開発に反映させている。だが、大企業のニーズは世界共通で、きちんと動く製品とサポートを重視している。これが信頼の構築につながっている。
--日本企業はどのような理由でPure Storageを選んでいるのか。
われわれは、創業時から既存技術が解決できない問題を解決することを重視してきた。例えば日本と韓国では、ファイル/オブジェクトストレージの「FlashBlade」はとても好調だ。FlashBladeは、AI(人工知能)やチップ設計のシミュレーションなどでの利用に適した製品で、他社ベンダーにはこのような製品はない。どのベンダーも自社製品の拡張性をうたっているが、工業プロセスとなると、われわれの技術の競争優位性は高い。高速だがシンプルな実装が可能で、そういった理由からIT担当はわれわれの製品を選んでいる。
今後さらなる信頼を蓄積し、日本企業がさまざまな用途でわれわれを選ぶようになると見ている。日本では、われわれの製品を1年使って良さを理解した顧客が次の2~3年で200~250%の購入をしている。
--ハイブリッドクラウドのシナリオをアピールしているが、日本でもハイブリッドのメッセージを打ち出すのか。
世界的な流れとしてクラウドに向かっている。日本企業はソフトバンク、NTTといった日本の技術プロバイダーを最初に利用し、その後にAWS(Amazon Web Services)などのパブリッククラウドを利用する。Pure Storageは全てで利用できるので、日本企業にとっては将来の投資保護としても優れた選択となる。
ハイブリッドとしてのシナリオもあるが、日本ではバックアップでの利用も重要なニーズだ。特にディザスタリカバリープラン(災害時復旧計画)でPure Storageが使われている。
--「FlashArray//C」を発表した。QLC NANDを採用したユニークな製品だが、どのような利用を想定しているのか。
FlashArray//Cは、全てのデータ向けという今後の戦略において重要な製品となる。実は2020年のローンチを予定していたが、顧客とのテストでとても良い反応をもらったので、前倒しして「Pure as a Service」(オンプレミスのストレージ従量課金サービス)とともに、このイベントで発表することにした。
ユースケースはテスト開発、バックアップ/リカバリー、アーカイブなど、これまでフラッシュメディアで行うとは思われていなかったような用途になる。Pure as a Serviceはオンプレミスで従量課金を実現できるサブスクリプションモデルだが、FlashArray//CはPure as a Serviceの利用を促進できる製品としても重要だ。FlashArray//Cは、数PBの容量で、中小の組織ではこの規模のストレージアレイを購入しようとは思わないだろう。だが、Pure as a Serviceを利用すれば、10GBや20GBで安価にスタートできる。クラウドのような従量課金モデルがオンプレミスで利用できることになり、とても意味のある製品セットになるだろう。
FlashArray//CをPure as a Serviceで提供することは、われわれにとって新しい局面を開く。
--中小規模市場に拡大するチャンスにもなるのか。
その通りだ。現在のわれわれはエンタープライズ顧客が多く、ビデオや写真などのメディアを扱う規模が小さい企業や個人は潜在ターゲットではなかった。だが、FlashArray//CとPure as a Serviceによって、このような顧客層にも訴求できる。
医療画像などのデータはオンプレミスで保存したいというニーズがある。AIやシミュレーションで使われるFlashBladeと、ユースケースでの重複はないが、2つの間の仮想的なレイヤーによりデータをやりとりできる。われわれは“モダンデータエクスペリエンス”として、データを中心にした環境を提供する。興味深いユースケースが出てくるだろう。Pure as a Serviceは業界を変える製品になると思っている。
--マルチクラウドやハイブリッドクラウドが広がる中でPure Storageの役割は何か。
顧客の中には、95%のデータがパブリッククラウドで使われ、5%のデータをPure Storageを利用しているところもある。だが効率性、ミッションクリティカル、低遅延などが重要なところでは、引き続きデータを同じ場所に置く必要がある。遅延が損失を生む金融取引などは良い例だ。
われわれはAWSと6年前から協業するなど、パブリッククラウドをパートナーと考えている。実際、管理ソフトウェアの「Pure1」は、AWSの上で動いている。
一方、パブリッククラウドでは、どこにデータがあるのか分からないことがある。だが、業界によってはデータの所在が重要だ。障害時にデータの所在を把握する必要がある場合、物理的なストレージが重要になる。
--モダンデータエクスペリエンスの成功で最も重要なのは何か。
情報を保存、加工、分析する場所がイノベーションを遅らせていた大きな要因だった。データサイエンティストは40~50%の時間をデータの収集や加工に費やしていた。Pure Storageのコンセプトは、データを正しいところに正しいフォーマットで置く。パブリッククラウドでもオンプレミスでも良い。セキュリティも土台に組み込まれている。
すぐにデータが使えるようになると、仕事が変わり、ビジネスも変わる。われわれは人々が日常でデータを見る、データを使う方法を変えたいと思っている。この戦略を成功させるためには、創業時からの思想であるシンプルさが重要だ。