Gartnerは、社会不安や緊縮経済、ポピュリズム、世代間ギャップ、持続可能性といった現代社会の問題に立ち向かうには、世界中の行政府が技術的なソリューションへの投資を増やす必要があると述べている。
同社は、公的組織が抱えている喫緊の課題に対して、政府機関の最高情報責任者(CIO)が効果的な政策を実現するための鍵になる、テクノロジー関連のトレンドを発表した。
Gartnerの調査担当バイスプレジデントRick Howard氏によれば、テクノロジーは、大規模に提供されるあらゆる公的サービスの基礎になっているという。同氏は、「もしテクノロジーの導入が稚拙なせいでこれらの業務計画の成功が妨げられれば、政治的な目的も妨げられてしまう」と述べている。
Howard氏は、2013年に米国でスタートした政府が運営する医療保険販売サイトHealthCare.govで、深刻な技術的問題が発生し、リリース直後にサービスが停止した事例を挙げた。
「この問題は、医療保険制度改革に批判的な勢力に、オバマケアを攻撃する根拠を与えてしまった」とHoward氏は言う。「これは、法制度をテクノロジーが実現できなければ、改革自体が危うくなる場合があることが明らかになった初めてのケースだった」
Gartnerのレポート「Technology Trends in Government, 2019-2020」では、そうした事態を避けるためのさまざまな対策を挙げている。
市民とのやりとりにテクノロジーを利用する
重要な対策の1つは、政府の市民とのやりとりを刷新することだ。行政府のウェブトラフィックの50%がスマートフォンからのものであることを考えれば、公的サービスは市民が選べるアクセス手段を増やすべきだ。これは対人窓口やスマートフォンかもしれないし、スマートスピーカーを使うことも考えられる。
また、集中管理された安全な市民のデジタルIDを作ることができれば、公的サービスへのアクセスをスムーズにすることができる。市民は確定申告や医療、選挙人名簿の管理などをはじめとする手続きをシングルサインオンで管理できるようになり、同時に、行政側はこれらの手続きが遅れる言い訳を減らすことができる。
管理体制をデジタル時代に合った形に改める
公的組織は管理体制を刷新する必要がある。Gartnerによれば、まず行うべきは「ウォーターフォール式」のプロジェクト管理を、「デジタルプロダクトマネジメント」(DPM)式に置き換えることだという。
DPMでは、マネージャーが製品やサービスのライフサイクルを通じて監督し、オファーの開発から顧客満足度の改善まで、あらゆる側面に対応する。これによって、最終的にはより素早く、持続可能な成果を挙げることができる。