94%が満足--マイクロソフトが社内「働き方改革」施策の効果を報告

阿久津良和

2019-11-01 06:00

 日本マイクロソフトは10月31日、今夏に実施した「ワークライフチョイス チャレンジ 2019夏」の効果測定の結果を発表した。8月全ての金曜日を休業日として、社員が特別有給休暇を取得し、全オフィスをクローズする「週勤4日&週休3日」や自己啓発関連費用のサポート、社会貢献活動費用サポート、異文化異業種職場体験プログラム、ファミリーケア・アイデアコンテスト、社会貢献活動マッチングプログラムなどの取り組みが行われた。

 同日の記者会見で執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員の手島主税氏は、今回の取り組みを実施するに当たり「大きな決断だったが、社員の満足度が向上した点は良かった」と感想を述べ。今冬と来年以降もワークライフチョイスチャレンジを実施していくことを明らかにした。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員の手島主税氏
日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員の手島主税氏

 同社は柔軟な働き方を実現すべく、2012年から「テレワークの日」を設けている。2014年以降は「テレワーク週間」、2016年からは政府が掲げる働き方改革に合わせて「働き方改革週間」に改称。同年度の賛同法人・団体数は833組織に及んでいる。2018年からは取り組みを「働き方改革NEXT」として、同社は働き方改革が第2期に突入したと判断、「ファーストラインワーカー(業務の最前線で働く人々)」「ミレニアル世代」「教育改革」と、焦点を明確にして新しい働き方の創出を目指してきた。

 手島氏によれば、過去10年間で同社の社員数は大きく増減していないが、8%減と減少傾向も見受けられる。「これまでも、約60万時間(約2カ月/1人当たり)の労働時間や、約110万枚のモノクロコピーを削減してきた。だが、(今回の効果測定を踏まえて)まだ非効率な業務が多く、会議の最適化も足りない」といい、社員個人の意識改革や企業文化の変革を実現するため、今回の取り組みを実施したと説明する。

 肝心の効果測定結果だが、手島氏は「削除系」「向上系」「満足系」の3分野に分けて解説した。削除系では、1カ月当たりの就業日数が前年比でマイナス25.4%、印刷枚数が同マイナス58.7%、電力消費量が同マイナス23.1%になった。

 向上系では、「売り上げ÷社員数」の数式で導き出した労働生産性が同プラス33.9%、“30分会議”の"実施比率が同プラス46%、リモート会議の実施比率が同プラス21%、1日当たりの人材交流が同プラス10%だった。なお、“30分会議”は長時間化しやすい会議の時間の最小限単位を30分にする試みになる。

 満足系では、施策全体を94%、週勤4日週休3日制度を92.1%と評価した。自己の成長と学びの視点を指す「for Work」カテゴリーのトップは「仕事の効率/効果」、私生活やファミリーケアの視点に立った「for Life」カテゴリーのトップ「休暇/休息」、社会参加や地域貢献の視点で見た「for Society」カテゴリーのトップは「中長期ライフデザイン」だった。

 55%の社員が特別休暇に加えて夏期/有給休暇を組み合わせて取得し、6%が10日以上(実質2週間以上)の長期休暇を取得している。また、各種の活動費用の支援もなされ、7~9月に社員が実施した活動に対して1629件の申請があり、前年度同期間比率は1.7倍に増えた。内訳はスポーツ・レジャー(43%)、国内旅行(21%)、リラクセーション・自己啓発(7%)だった。

 平日に連続5泊の長期休暇を伴う国内旅行費用補助は、例年の3倍の社員が利用したという。取り組みについての回答(フリーコメント)856件のうち約1割が強い不満を持ち、顧客と顔を合わせる時間が多い営業部門では「先方との調整でストレスが発生」という声や、活動時間で契約するコンサルティング部門などからは「(見方によって)会社から(業務時間を)削られた印象を持った」といった意見が寄せられた。同社では、こうした構造的な問題に対して施策を講じたが、完全ではなかったと分析している。

 一連の取り組みは日本マイクロソフト独自のものだが、今回の結果を米国本社のケースと比較したところ、日本ではメールに費やす時間は他国より24%も多く、メールを送信先は31%も多いという。会議の参加時間が17%長く、参加者数も11%と多いことが分かった。これらの数値を鑑みると、外資系企業の日本マイクロソフトであっても、日本のビジネスパーソンや企業の独特の文化的な影響を受けているようだ。

 手島氏は、「知見を顧客に届けたい。多くの企業とともに実践することで、多様な働き方を実現し、社員自身の洞察を得るきっかけになる。チャレンジの輪を広げるアクションを実践したい」と述べた。今後は「ワークライフチョイス チャレンジ 2019冬」で、「多様な働き方への主体的・自律的チャレンジ」「チャレンジの“輪”を広げる」ことをキーワードに掲げ、有給休暇の徹底活用や年末年始休暇などとの連動、スマート会議の継続や「Workplace Analytics」による可視化・分析、アイデアコンテストの実施などを予定するという。

 また、ミレニアル世代向けの「MINDS(Millennial Innovation for the Next Diverse Society)」プログラムとの連携や、JR東日本と共同で駅ナカシェアオフィス「STATION WORKPLACE」を活用した実証実験・知見の提供も行う予定。週勤日数などは未定ながら今後のワークライフチョイス チャレンジの実施計画の策定を進めている。

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