ベルシステムズ24、コールセンター業務に「HoloLens 2」を活用

阿久津良和

2019-12-03 07:00

 日本マイクロソフトは12月2日、コールセンターアウトソーシング事業を展開するベルシステム24ホールディングス(HD)、その顧客企業であるデロンギ・ジャパン、DataMeshの3社と連携し、コールセンター業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する共同プロジェクト「コールセンター・ワークスタイル・イノベーション・プロジェクト」を共同発表した。

 このソリューションは、ヘッドマウント型端末「Microsoft HoloLens 2」とDataMeshの3Dホログラム技術を活用し、デロンギ製品の顧客サポート業務をコールセンター拠点以外でも提供することを目的としている。ベルシステム24HD 代表取締役 社長執行役員CEO(最高経営責任者)の柘植一郎氏は「時間・場所の制約から解放し、ビジネスの発展や顧客への価値提供、社会的課題への挑戦」とプロジェクトの意義を語った。

ベルシステム24ホールディングス 代表取締役 社長執行役員CEO 柘植一郎氏
ベルシステム24ホールディングス 代表取締役 社長執行役員CEO 柘植一郎氏

 現在、デロンギ・ジャパンの消費者向けコールセンター業務を請け負っているベルシステムズ24HDは、地方の労働機会不足や労働人口減少を背景に、約1年半前からコールセンター・ワークスタイル・イノベーション・プロジェクトに着手した。その背景には、「企業の事情に合わせて働いていただく方が減っている」(柘植氏)という現状がある。

 通常であればコールセンターにデロンギ・ジャパンの製品を設置し、オペレーターは実機をもとに消費者への問い合わせに対応するため、在宅勤務を抑制してしまう。プロジェクトに参画した4社は、HoloLens 2を通してデロンギ・ジャパンの全自動コーヒーマシン「エレッタ カプチーノ トップ」を3Dモデル化し、実機を設置せずとも消費者対応を可能にする「コールセンター・バーチャライゼーション」を実現。「地方の自宅に住みながら、コールセンターに出向くことなく、エスプレッソマシンの内部まで確認できる。2時間働き、2時間は子どもの面倒を見るといったことも可能」(柘植氏)とする。

 オペレーターが顧客対応する際、HoloLens 2に映し出される3Dモデルは、事前に3Dモデルと対応シナリオを用意し、パブリッククラウドの「Microsoft Azure」に構築した「DataMesh Director」にアップロード。オペレーターは配信された3Dホログラムとシナリオに沿って顧客対応する仕組みだ。実装を担当したDataMeshは「CADデータの変換ツールを用意しているが、CADデータがない場合は3Dモデルを制作対応するチームを用意。(対応シナリオも)PowerPointを編集する要領で作成できる。ユーザー部門でも対応可能だ。HoloLens 2に限らずiOSもサポート。近日中にAndroidにも対応する」(同社 代表取締役 王暁麒氏)とシステム基盤の概要を説明した。

DataMesh 代表取締役 王暁麒氏
DataMesh 代表取締役 王暁麒氏

 日本マイクロソフトは11月7日に出荷開始したHoloLens 2について、「3Dホログラムが目的ではない。ビジネス用途に活用できるか研究開発してきた」(同社 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員 手島主税氏)と述べながら、プロジェクトについて「ファーストラインワーカーがデジタルを活用することで、多くのことを実現し、働き方の自由度を高められる」と価値を訴求。

 HoloLens 2は装着者の視点を追いかけるアイトラッキング機能を備えており、「優秀なオペレーターの業務ナレッジを共有することにも取り組んでいきたい」(手島氏)とさらなる可能性を示した。自宅などで顧客対応を行う場合、セキュリティの課題も想定されるが、HoloLens 2は虹彩認証をサポートしているため、家族経由で情報漏えいする可能性は低い。前述の通り、このプロジェクトは約1年半前となる2018年6月ごろから始まっているが、当時は旧モデルの「Microsoft HoloLens」のみだった。

 HoloLens 2を選択した理由として、DataMeshは「当時はHoloLensで検証したが、(HoloLens 2では両指10本を使ったジェスチャー機能を備えており)より直感的なジェスチャーは現場でもウケがよかった」(王氏)と新モデルの優位性を語った。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員 手島主税氏
日本マイクロソフト 執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長 兼 働き方改革推進担当役員 手島主税氏

 デロンギ・ジャパンは「経営理念である『No.1戦略』を顧客サポートへも拡大。サポートシステムを次の段階へ」(同社 代表取締役社長 杉本敦男氏)とプロジェクトへの期待を寄せた。ベルシステム24HDは、プロジェクトが「実証実験であると同時に本番環境」(柘植氏)とし、数カ月単位で改善を加えながら対応製品や運用を拡大しつつ、2021年末をめどに汎用的なビジネスモデルの構築と他の顧客企業への導入を推進する。

デロンギ・ジャパン 代表取締役社長 杉本敦男氏
デロンギ・ジャパン 代表取締役社長 杉本敦男氏

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