本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本IBMの三澤智光 取締役 専務執行役員と、NECの松倉肇 取締役 執行役員常務の発言を紹介する。
「ITはビジネスを支えるものから、ビジネスそのものになってきている」
(日本IBM 三澤智光 取締役 専務執行役員)
日本IBMの三澤智光 取締役 専務執行役員
日本IBMが先頃、企業の業務システムをクラウドへ移行す際に効果的なコンテナー対応のミドルウェア群「IBM Cloud Paks」の提供を始めたことに伴い、その内容について記者説明会を開いた。同社で取締役 専務執行役員 事業開発担当兼ハイブリッド・クラウド・リードを務める三澤氏の冒頭の発言は、その会見で、ITの役割の変化について語ったものである。
IBM Cloud Paksおよびその重要なソフトウェアであるコンテナー管理基盤「Red Hat OpenShift」などの説明については関連記事をご覧いただくとして、ここでは三澤氏の冒頭の発言に注目したい。
同氏は会見で図を示しながら、次のように語った。
あらゆる企業が“デジタル企業”に
「デジタル化は待ったなし、というのが最近のIT分野の大きな流れとなっている。ただし、デジタル時代におけるITの役割は結構変わってきている。これまでのITの役割は『ビジネスを支えるIT』で、例えば、財務会計や販売管理、人事給与、生産管理などがそうだった」
「それがデジタル時代になると、ITでビジネスをつくっていくという発想で、まさしく『ITがビジネスそのもの』になってきている。善し悪しは別にして、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に代表されるような企業は、ITをビジネスそのものにして成功している」
「そうしたデジタルの時代において、より良い製品やサービスをつくっていくためには、ソフトウェアの重要性が非常に高まってきていると考える。もちろん、ハードウェアづくりも引き続き重要だが、製造業が強い日本においても、製品やサービスをつくる上でソフトウェアの比率がグッと高まってきていることは注視していかなければならない」
「ソフトウェアの技術がどんどん向上していく中で、今後出てくる優れたソフトウェアというのは、もう基本的にオープンソースからしか生まれないのではないかと見ている。ただ、そのオープンソースをそのまま一般企業の皆さんが使うのは、なかなか難しいということで、一般企業の皆さんにもオープンソースの優れたソフトウェアを使いやすくして提供することで、皆さんのデジタルトランスフォーメーション(DX)をお手伝いしていくというのが、IBMとRed Hatの使命だというふうに考えている」
以上、冒頭の発言にまつわる三澤氏の見解をノーカットで記した。同氏は上記の説明を「能書き」と前置きしたが、なかなか印象的な話だったので書き残しておきたい。