ロボティクス業界は好調な時代のまっただ中にある。業界の多様化が促進されたことで、2020年には世界で1000億ドル(約11兆円)に達するとみられるこの業界は破竹の勢いで成長を遂げてきている。
産業ロボットは今や、重工業や大規模工場といった分野だけのものではなくなっている。特に協働型ロボットは企業顧客を拡大するうえで役立っており、軽工業やマテリアルハンドリング(MH)、フルフィルメントなどの業界において、中規模企業だけでなく小規模企業でさえも導入が進んでいる。
しかし、好調な時代はいつまでも続かないのではないだろうか。米ZDNetはRealtime Roboticsの製品開発責任者であるChris Harlow氏にインタビューし、2020年以降の予想を語ってもらった。ひと言で述べると、業界の一部ではまだ好調な時代が続いているが、それは全体的に長続きするものではないという。
Harlow氏によると、短期的な視点で見た場合、「コボット(cobot)」とも呼ばれる協働型ロボット(collaborative robot)の行く手には暗雲が垂れ込めているという。力をそれほど要しない作業に用いられるこうした小型の卓上ロボットは、大規模工場以外への産業自動化の普及に一役買ってきた。また、そのメーカーは小規模ながら、同分野を力強くけん引してきた。しかし、そうした状況は終わりを迎えようとしているという。
Harlow氏は「パワーや力に制約のあるロボット(コボット)に対する需要は、機能や能力に限界があることから、頂点を過ぎた」と述べ、「メーカーは2025年までにこうしたシステムへの投資をやめ、従来型のコボットは、人とロボットが協働するワークセルに向けた、より優れたテクノロジーによって置き換えられるだろう」と続けた。
こうしたシフトが起こっている理由の1つとして、従来型の産業ロボットはケージ内でのみ動作していたが、視覚システムの進歩や、その他のさまざまな安全装置のおかげで人のすぐ横で作業できるようになってきている点を挙げることができる。
Harlow氏は「産業ロボットのプログラム開発が著しく容易になるとともに、普及に向けた敷居が低くなっていくだろう」と述べたうえで、「ロボティクスによる自動化が物流や、電子部品の組み立てといった新たな産業分野に拡大していくにつれ、こうした敷居の低さは大々的な普及に必須となるはずだ。これはスクリプトベースのプログラミングからグラフィカルベースのプログラミングへのシフトによっても加速されるだろう」と続けた。
ただHarlow氏は、中期的な視点で見た場合に規制環境が進歩の足かせとなる可能性があると警告している。
同氏は「2020年代に人工知能(AI)/機械学習(ML)テクノロジーが『西部開拓時代』のような状況を脱し、ほとんどすべてのものがより統制された規制環境に移行するだろう。強制力のある規制によって進歩のペースが低下するのは避けられず、これはロボティクスによる自動化に影響を及ぼすはずだ。例えば、AI/MLアルゴリズムに安全面での規制が適用されることで、オーディオ/ビジュアル系への鍵である視覚システムの開発速度が低下するとともに、産業ロボットにキッティングや荷物の分類といったより複雑なタスクを任せにくくなるだろう。
こういったことすべては、年平均成長率(CAGR)にして約26%という著しい伸びが見込まれている業界全体にとってちょっとした障壁になるはずだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。