MIT、「Julia」上で動作する初心者向け汎用AIプログラミングシステム「Gen」を発表

Liam Tung (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2019-07-01 10:55

 マサチューセッツ工科大学(MIT)は米国時間6月26日、確率的プログラミングシステム「Gen」を開発したと発表した。Genにより、初心者でもコンピュータービジョンやロボティクス、統計に関する処理を容易に手がけられるようになるという。

 Genは、「Julia」に組み込まれるかたちで実装されている。なお、JuliaはMITの研究者らによって2012年に公開された動的プログラミング言語であり、世界的に高い人気を集めている。

 Genの開発者らは「カスタム化した複数のモデリング言語をJuliaに組み込む」ことで、ユーザーが「数式と格闘したり、高効率なコードを手作業で記述したりせずとも」人工知能(AI)のモデルやアルゴリズムを開発できる新たなAIプログラミングシステムを生み出したとMITは述べる。

 このシステムは予測などの複雑なタスクにも使用できるため、技術に造詣の深い研究者にも役立つだろう。

 MITの論文によると「Gen」という名称は、従来の確率的プログラミングでは考慮されていなかった、「汎用目的」(General purpose)での使用を可能にすることを念頭に置いて付けられた。

 論文には「既存のシステムは汎用目的としては実用的ではない」と記されている。

 また、「特定の問題領域にのみ適した、制約の大きいモデリング言語を提供しているシステムがある。その一方で、どのようなモデルでも表現できる『汎用の』モデリング言語を提供しているシステムもあるが、そういったシステムは使いものにならないほど収束の遅い推論アルゴリズムしかサポートしていない」とも記されている。

 今回のシステムにより、例えば、人の姿勢といった立体的な形状の状態を推論し、自動運転車やジェスチャーベースのコンピューティング、拡張現実(AR)に用いられるコンピュータービジョンのタスクを簡素化するようなプログラムを作成できるようになる。

 Genは、MITが2013年に「DARPA AI」プログラムから獲得した資金によって2015年に開発した確率的プログラミングシステムを強化するかたちで、グラフィックス描画やディープラーニング(DL)、さまざまな確率シミュレーションを組み合わせている。

 MITで電子工学及びコンピューターサイエンスの博士課程を専攻しており、この論文の主執筆者であるMarco Cusumano-Towner氏は、「自動化されたAIを、コンピューターサイエンスや数学の専門知識をさほど必要とせずとも、容易に扱えるようにするというのがこの研究の目的の1つとなっている」と述べている。

 「われわれはまた、生産性を向上させることで、専門家によるAIシステム開発時の試行錯誤やプロトタイプ作成の迅速化を容易にしたいと考えている」(Cusumano-Towner氏)

 Microsoftが「AIの民主化」を旗印に掲げているように、MITの研究者らもデータサイエンスをあらゆる人々のもとに送り届けようとしている。

 また、MITによるとこれは、Googleの「TensorFlow」の1歩先を行くものだという。

 MITは、TensorFlowが「DLモデルに的を絞っている」という点で、AIの持っている潜在的能力を完全に解放していない可能性を指摘している。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  2. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

  3. 運用管理

    IT管理者ほど見落としがちな「Chrome」設定--ニーズに沿った更新制御も可能に

  4. セキュリティ

    シャドーITも見逃さない!複雑化する企業資産をさまざまな脅威から守る新たなアプローチ「EASM」とは

  5. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]