マサチューセッツ工科大学(MIT)は米国時間6月26日、確率的プログラミングシステム「Gen」を開発したと発表した。Genにより、初心者でもコンピュータービジョンやロボティクス、統計に関する処理を容易に手がけられるようになるという。
Genは、「Julia」に組み込まれるかたちで実装されている。なお、JuliaはMITの研究者らによって2012年に公開された動的プログラミング言語であり、世界的に高い人気を集めている。
Genの開発者らは「カスタム化した複数のモデリング言語をJuliaに組み込む」ことで、ユーザーが「数式と格闘したり、高効率なコードを手作業で記述したりせずとも」人工知能(AI)のモデルやアルゴリズムを開発できる新たなAIプログラミングシステムを生み出したとMITは述べる。
このシステムは予測などの複雑なタスクにも使用できるため、技術に造詣の深い研究者にも役立つだろう。
MITの論文によると「Gen」という名称は、従来の確率的プログラミングでは考慮されていなかった、「汎用目的」(General purpose)での使用を可能にすることを念頭に置いて付けられた。
論文には「既存のシステムは汎用目的としては実用的ではない」と記されている。
また、「特定の問題領域にのみ適した、制約の大きいモデリング言語を提供しているシステムがある。その一方で、どのようなモデルでも表現できる『汎用の』モデリング言語を提供しているシステムもあるが、そういったシステムは使いものにならないほど収束の遅い推論アルゴリズムしかサポートしていない」とも記されている。
今回のシステムにより、例えば、人の姿勢といった立体的な形状の状態を推論し、自動運転車やジェスチャーベースのコンピューティング、拡張現実(AR)に用いられるコンピュータービジョンのタスクを簡素化するようなプログラムを作成できるようになる。
Genは、MITが2013年に「DARPA AI」プログラムから獲得した資金によって2015年に開発した確率的プログラミングシステムを強化するかたちで、グラフィックス描画やディープラーニング(DL)、さまざまな確率シミュレーションを組み合わせている。
MITで電子工学及びコンピューターサイエンスの博士課程を専攻しており、この論文の主執筆者であるMarco Cusumano-Towner氏は、「自動化されたAIを、コンピューターサイエンスや数学の専門知識をさほど必要とせずとも、容易に扱えるようにするというのがこの研究の目的の1つとなっている」と述べている。
「われわれはまた、生産性を向上させることで、専門家によるAIシステム開発時の試行錯誤やプロトタイプ作成の迅速化を容易にしたいと考えている」(Cusumano-Towner氏)
Microsoftが「AIの民主化」を旗印に掲げているように、MITの研究者らもデータサイエンスをあらゆる人々のもとに送り届けようとしている。
また、MITによるとこれは、Googleの「TensorFlow」の1歩先を行くものだという。
MITは、TensorFlowが「DLモデルに的を絞っている」という点で、AIの持っている潜在的能力を完全に解放していない可能性を指摘している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。