2020年が明けた。朝日インタラクティブが運営する「ZDNet Japan(以下、ZD)」では大企業のIT部門を中心に、「TechRepublic Japan(同TR)」では中堅中小企業のIT部門と大企業の非IT部門を中心に、それぞれの企業読者がITの活用において議論すべき話題を日々提供している。そこで2020年の新春企画として2つの編集部が意見を出し合い、2019年を振り返りつつ、2020年は何を議論すべきなのかをまとめた。参加したのは以下の通り。
ZDNet Japan編集部:國谷武史(編集長)、藤本和彦、大場みのり、海外記事担当(以下、海担)
TechRepublic Japan編集部:田中好伸(編集長、ZD副編集長を兼務)、河部恭紀、藤代格
データの意味を解釈させるストーリーが重要
TR田中:2019年で気になったことは何?
ZD藤本:アナリティクスやデータ活用、データ管理基盤などを担当していますが、2019年辺りから使われ始めたキーワードの1つで「Augmented Analytics(拡張分析)」が目立ちました。これまでのBI(ビジネスインテリジェンス)はグラフやチャートを用いた可視化に焦点を当てていましたが、可視化されたものを分析するのはユーザーの能力に依存してしまいます。
まだ、「データ分析の民主化」という文脈では現実に追いついておらず、AI(人工知能)に膨大なデータ量の構造を学習させることでインサイト(洞察)を提示する段階までを自動化するに至りつつあります。ビジネスユーザーやライトユーザーでも分析から知見を得られるような機能がBIやアナリティクス系ソリューションで増えたように感じました。
TR田中:基盤的に見ればセルフサービスやビジュアライゼーションは数年前から流行り出して、数字の羅列であるデータを直感的に捉えられるようになってきた。この段階で拡張分析が使われ始めたという状況?
ZD藤本:大事なのはビジュアライズしたものを、どのように判断するかです。データの活用に慣れていないエンドユーザーは「それで?」となってしまいがち。分析結果に自然言語処理を用いて文章化し、「このような示唆がある」「このグラフにはこんなストーリーがある」といった内容をツール側が提供してくれるようになったのです。
TR田中:なるほど、ツール側ね。以前であればデータの意味を知る、ビジネスアナリスト――この職種を日本企業で設置しているところは少ないけど――が能動的に読み解いてきたけど、今はツール側が提供するようになったと。
BIの文脈でよく語られてきたのが、第1段階として「過去に何があったか」です。現在は第2段階、第3段階にあり、「過去の状況を分析して未来を予見」する予測分析が登場した。データ活用の意味合いが変化し始めたように感じられているよね。その一端が拡張分析に象徴されているのかもしれない。
最近では手垢(てあか)が付いた感もある「ビッグデータ」も拡張分析が有効になれば、ビジネスで使える体制が整いつつある。ただ、データを活用できる人材をそろえられるかが、これからの企業に突き付けられる課題になるかもしれない。