本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本HPの岡隆史 代表取締役 社長執行役員と、NECの西原基夫 取締役執行役員常務兼CTOの発言を紹介する。
「世の中のメガトレンドに対してどう貢献できるかが事業戦略の基本的な考え方だ」
(日本HP 岡隆史 代表取締役 社長執行役員)
日本HPの岡隆史 代表取締役 社長執行役員
日本HPが先ごろ、2020年の事業戦略について記者説明会を開いた。岡氏の冒頭の発言はその会見で、言葉通り、事業戦略の基本的な考え方を述べたものである。
PCとプリンター事業を柱とする日本HPの親会社である米HPは、2019年度(2019年10月期)の売上高が6兆4000億円という超大企業である。売上高の前年度からの伸び率は2%増。2018年度(2018年10月期)の伸び率が前年度比12%増だったので少々伸び悩んだ格好だが、岡氏は「全体として堅調だった」との見方を示した。
日本HPの業績は明らかにしていないが、PC事業が好調に推移し、IDCの調査結果によると2019年に初めて国内シェアトップを獲得した。また、17年連続で市場を超える成長率を記録し、企業向けPCでもこのところ4四半期連続でシェアトップを走っているという。
会見全体の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは岡氏の説明から「2020 メガトレンドへの対応加速」という話を取り上げたい。
図に示されているのがその内容で、メガトレンドとして「急速な都市化」「人口動態の変化」「超グローバル化」「イノベーション加速」の4つを挙げている。
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例えば、急速な都市化では、大都市に人口が増加する傾向が続いている中で、人々はそれぞれ限られた居住空間においてモノを所有するより必要に応じて利用する形のシェアリングサービスが広がるだろうと予測。そうしたニーズに対し、HPが持つ技術・製品・サービスによってどのように貢献できるかを探るといった思考パターンだ。
また、人口動態の変化に対しては、日本をはじめとしてこれから高齢化社会を迎える国が少なくない中で、増え続ける高齢者と若年層が同じ職場で快適に働きながら生産性を上げていけるようにするために、HPは何ができるか、といったことを考える。
今回の4つのメガトレンドへの対応におけるビジネスキーワードとして、図の下段に記されている「持続可能性」「パーソナライズ&オンデマンド」「モビリティ&セキュリティ」「サービス化」「リアル/デジタル融合」の5つを挙げている。
岡氏はこの5つのビジネスキーワードについて、「HPが保持している技術・製品・サービスの強みを生かすことができる領域と捉え、積極的に事業を広げていこうと動いている」と説明した。
メガトレンドの話は、聞きようによってはHPの事業と少しかけ離れているように思えるが、こうした観点から事業の意義を見出し、戦略を練るというアプローチは、やはり歴史と伝統のある企業ならでは、という印象だ。企業は規模にかかわらず、こうした姿勢を大事にすべきだろう。