経済産業省は、中央省庁と自治体の行政手続のデジタル化に向けて、マイクロソフトのビジネスアプリケーション作成ツール「Microsoft Power Apps(Power Apps)」を活用し、2020年内の本格展開を目指して実証実験を開始した。
同省では「2025年の崖」の克服に向けて、省庁や自治体の行政手続のデジタル化が急務であると考え、Power Appsを活用した、簡便・迅速なデジタルトランスフォーメーション手法およびその効果を検証するための実証実験を行うこととした。「2025年の崖」は、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムや旧来のアプローチでのシステムづくりが残存した場合に想定される、日本の国際競争への遅れや経済の停滞などにより、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるという課題のことをいう。
従来の進め方との違い
Power Appsは、プログラミングの知識がない人でも、PCやスマートフォンで動作するビジネスアプリケーションを容易に作成できる。実証では、後援名義申請の手続きなどをユースケースとして、経産省内のIT専門人材が、実用化されているプログラミングレスツール(プログラミングが不要なツール)を利用して、デジタル申請・処理が可能な環境を構築し、実証運用・改善を行うことで、手続きのデジタル化の拡充を進める。この際に利用する実証基盤としてPower Appsが採用された。
行政職員の多くが、業務をデジタル化したいと考えているものの、従来の進め方では時間や費用がかかるうえに、期待したほどの効果を得るのが難しいため、特に頻度や件数の少ない業務ではデジタル化の検討が行われないままとなっている。今回は、こうした業務も含めてPower Appsを活用した事業が新たなデジタル化のアプローチになるものと期待されている。
導入を支援するWin テクノロジと日本マイクロソフトは経産省と連携し、「後援名義申請デジタル化等を例とした行政手続 PaaS 環境の導入実証・調査事業」において、後援名義申請デジタル化などを例とした行政手続きでのPaaS(Platform as a Service)環境の導入実証・調査を行う。またPower Appsを使って行政手続き用のアプリケーションを開発するハッカソンを実施し、ハッカソンで誕生したアプリケーションを導入実証する。さらに経産省内の IT 専門人材が、Power Appsを活用して、他の中小規模の簡易な手続向けにアプリケーションを開発していくための環境構築や、スキルアップの支援していく。
Power Apps で開発したアプリケーションのイメージ
行政手続きをPower Appsでデジタル化することで期待される効果としては、簡便な学習で技術を取得できるローコードツール(最小限のコードだけでアプリケーションを開発できるツール)により、迅速かつ低コストで手続きのデジタル化を実現できることが挙げられている。また、事業者および行政における各種手続の業務処理にかかる時間の効率化、決裁リードタイムの大幅な短縮による企業の円滑な事業活動の促進が期待できる。