本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、SAS Institute Japanの堀田徹哉 代表取締役社長と、マカフィーの櫻井秀光 セールスエンジニアリング本部長の発言を紹介する。
「データサイエンティストの育成サービスだけでも要望があれば提供する」
(SAS Institute Japan 堀田徹哉 代表取締役社長)
SAS Institute Japanの堀田徹哉 代表取締役社長
SAS Institute Japanが先頃、2020年度(2020年12月期)の事業戦略について記者説明会を開いた。堀田氏の冒頭の発言はその会見の質疑応答で、人材育成サービスの展開について聞いた筆者の質問に答えたものである。
堀田氏によると、SAS Institute Japanの2019年度(2019年12月期)の業績は、4年連続で増収となり、過去最高の売上高を記録。「デジタルトランスフォーメーション(DX)支援ソリューションの進展」「クラウドビジネスの成長」「サービスビジネスの躍進」が成長に寄与したという。
2020年度はこうした取り組みを継続するとともに、「お客さまのDXの成功に向けて、SAS Institute Japanとしてワンチームで臨みたい」と堀田氏。事業としてはソフトウェア製品やソリューションだけでなく、コンサルティングサービスや人材育成サービスとともに提供する同社の強みをさらに磨き上げていく構えだ。(図参照)
SAS Institute Japanの2020年度の基本方針
事業戦略の詳しい内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言とともに同社の人材育成サービスに注目したい。
堀田氏は人材育成における多くの企業の悩みについて、「データサイエンティストが不足している。あるいはDXをプランしたりリードしたりする人材がなかなか育たないということで、そうした人材を外部から中途採用しようとしてもマーケットが高騰していて難しいといった状況だ」と説明した。
そして、「SASはそうしたニーズに対応して、データサイエンティストやDXを推進する人材を育成するプログラムを用意している。しかもスタンダードな内容から、ご要望に応じてお客さまごとにカスタマイズした形でも提供している」とアピールした。
その「お客さま」はSASのソフトウェア製品やソリューションのユーザーが前提のように聞こえたので、筆者は会見の質疑応答で「そうした人材育成サービスは、SASユーザーでなくても受けられるのか」と聞いてみた。とりわけ、データサイエンティストの育成では、アナリティクス市場を長年リードしてきたSASのノウハウが重宝されるだろうと考えたからだ。この質問に対する堀田氏の答えが、冒頭の発言である。
ちなみに、同社のうたい文句には「企業内の実データを用い、実際のデータサイエンス業務を通した育成プログラムを実施」、さらに「データ準備、モデリングから課題解決まで一気通貫で対応できるデータサイエンティストの早期育成を支援」とある。こうしたサービスはSASにとっても新たな顧客獲得の機会になりそうだ。