海外コメンタリー

新型コロナウイルス、世界のIT市場に今後どう影響するのか

Forrester Research (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2020-02-25 06:30

 新型コロナウイルス(「COVID-19」)の世界経済やグローバルIT市場に対する影響の全容は、現時点ではまだ見えていない。感染の拡大はまだ落ち着きを見せておらず、中国で完全に封じ込められているわけでもないため、他国でも感染が広がる可能性がある。膨大な数の死者が出た1918年のスペインかぜのような世界的な大流行に変貌する可能性もゼロではないかもしれない。しかしわれわれForrester Researchは、過去の自然災害や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの流行の経験から、経済やIT市場への影響は短期間、かつ局所的なものに終わると考えている。

 COVID-19の直接的な影響は比較的小さい。現時点での死者数は2000人を上回ったと報じられているが、この数字は、米国疾病対策予防センターが2019~2020年にかけてのインフルエンザシーズンの米国での死者を1万4000~3万6000人と推定していることと比較すれば、そこまで大きいものではない(同センターが発表した「2019-2020 U.S. Flu Season: Preliminary Burden Estimates」を参照)。

 市場が受ける影響は、むしろ武漢市や湖北省の封鎖によるものが大きい。封鎖によって、これらの地域の経済活動は大部分が停止しており、ほかの地域でも工場やオフィスが閉鎖したり、小売業者、輸送などが影響を受けている。自動車工場やIT関係の生産施設を含むいくつかの工場は操業を再開しているが、水準は以前ほどではない。

 コンピューターや通信機器などの耐久財に関しては、需要に対する供給に遅れが発生するものの、速やかに回復する。2020年第1四半期に行われるはずだった耐久財の販売は、封鎖解除後に生産が平常に戻れば、第2四半期か第3四半期に行われると考えられる。コンピューターや通信機器の販売に関しては、IT市場のすべてのセグメントで同様のパターンがみられる可能性が高い。IT市場の中でも、SaaSのサブスクリプション料金や、通信料、アウトソーシング費用などの分野では、取引量は変わらないとみられる。

 航空旅行やコンサルティングプロジェクトなどの非耐久財や時間ベースのサービスに関しては、需要の発生は遅れ、回復しない可能性がある。第1四半期に販売できなかった食品および農産物は廃棄されるだろう。同様に、飛行機の空席やホテルの空室、稼働しなかったコンサルティングチームなどが上げるはずだった利益は永遠に失われる。

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