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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

新型肺炎で注目を集めるリモートワーク--“新BAT”が積極姿勢

山谷剛史

2020-02-18 07:00

 中国では新型コロナウイルス「COVID-19」(以下、新型肺炎)が猛威を振るっているが、日本でもいよいよ感染拡大かと言われている。新型肺炎の収束が収まりそうにない中、春節の大型連休が明けた中国各地では、リモートワークを導入して業務を再開する企業も出てきた。

 新型肺炎が話題になってしばらく経過した2月14日、検索大手の百度(バイドゥ)は、新型肺炎に関する検索についての調査結果を発表した。連休明けの仕事で最も気にするのは「肺炎に感染したときの労災」であり、続いて「従業員へのマスク配布」「時間をずらした通勤」「社員食堂の安全」「セントラル空調の消毒」が挙げられた。また、企業の営業活動を再開する手段の一つとして、リモートオフィスのニーズが高まっている。特にリモートワークは、生鮮EC(電子商取引)サービスやオンラインラーニング(中国ではK12と呼ばれる)、オンライン医療サービスとともに注目を集めている。

 ビジネスSNSの「脈脈」(maimai)が4日に発表した調査レポート「職場人開工状態調研」によれば、アンケート回答者の42%が既に自宅作業を行っていると回答。17%が休暇を取り続けている、6%が出社していると回答した。勤務時間は「各人に任せ、仕事があるときに勤務」(41%)、「通勤時と同じ時間に勤務」(27%)などとなった。

 一方で、回答者の4割が在宅勤務について、「仕事に集中できない」「やる気が出ない」「同僚とのコミュニケーションがうまくいかない」「仕事と休憩、公私のバランスが難しい」と回答する。出勤再開後の心配事は、バイドゥの調査結果と同様に、健康保障制度の有無のほか、プロジェクト納期などが多く上がる。管理職は企業の存続を心配するが、エンジニアは転職の有無が悩み事になっている。

 転職市場においても、世情を反映させた人材へのニーズが高まっている。人材紹介サービスの猟聘(リエピン)が発表したパンデミック下のハイエンド人材に関するレポート「疫情下2020中高端人才開工大数拠報告」でも、企業向けSaaS、オンライン生活サービス、オンラインラーニング、オンライン医療サービスを提供する企業がリーダークラスの人材を欲している。

 “新BAT”と呼ばれるインターネット最大手の字節跳動(バイトダンス)、阿里巴巴(アリババ)、騰訊(テンセント)の3社がリモートワーク環境を普及させようと積極的に動いている。アリババはコラボレーションツール「釘釘」(DingTalk)、テンセントは企業版WeChat「企業微信」と会議ツール「騰訊会議」(Tencent Meeting)、バイトダンスは企業向けSNS「飛書」(Feishu)の機能強化を進めている。日夜、急ピッチで開発しているため、新機能が次々と追加されている。

 加えて、このタイミングに乗じて、各社が太っ腹なサービスキャンペーンを実施している。アリババはビデオ会議システムを含むオフィスソリューションを1000万社に無料提供すると発表。テンセントは企業微信でオンライン会議システムやオンライン問診システムを追加。バイトダンスは飛書の無料サポートを用意するほか、湖北省の学校や公益組織に対して3年間無料で提供すると発表した。3社以外では、華為技術(ファーウェイ)がコラボレーションツール「WeLink」やクラウドストレージ(50GB)を無料で提供するとしている。

 大手各社によるビジネスツールの攻勢は、もともと開発人材を豊富に抱え、資金力もあり、クラウドに力を入れているからこそできた。これは今に始まったわけではなく、数年前から大手各社をはじめ、中国のインターネット業界全体がレッドオーシャンである消費者向けから、ブルーオーシャンといえる企業向けにサービスを拡大させてきた。ところが、企業での導入が思ったよりも低かったことから、米国などの先進各国と比べてSaaSの普及は極めて低かった。企業向け市場でネットサービスを普及させたい各社としては、新型肺炎は国難である一方で千載一遇のチャンスともいえる。

 だからこそ各社は大盤振る舞いでサービスのお試しキャンペーンを実施している。それはかつてタクシー配車大手の「滴滴」(Didi)が展開した乗った分だけ運転手にも乗客にもキャッシュバックするキャンペーンや、アリババ系の金融企業である蚂蚁金服(アントフィナンシャル)の「支付宝」(Alipay)とテンセントの「微信支付」(WeChat Pay)のキャッシュバックキャンペーンをほうふつとさせる。

 2020年もだいぶ過ぎたころには、各社のリモートワーク導入率は、すごく普及するわけではないものの、これまでとは明らかに異なる様相となるだろう。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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