サイボウズがPaaS型クラウドサービス「kintone」を「企業全体の情報共有プラットフォーム」へと進化させていく方針を打ち出した。その考え方を同社の青野慶久社長が記者会見で明らかにした。果たして、どんなものか。
企業における情報共有の取り組みはこれからが本番
「情報共有という言葉は、もはや使い古されたと感じる人が少なくないかもしれないが、企業における情報共有の取り組みはまさしくこれからが本番だ」――。
サイボウズ代表取締役社長の青野慶久氏
サイボウズが先頃開いた事業戦略に関する記者会見で、説明に立った青野氏は開口一番、こう強調した。どういうことか(写真1)。
同社の企業理念は、「グループウェアによる情報共有によって、チームワークあふれる組織や社会を創る」。創業20年余りにわたって、この軸は変わらないことを考えると、それだけでも確かに「情報共有」という言葉は使い古されてきたかもしれない。
だが、冒頭の発言にあるように、企業における情報共有の取り組みはこれからが本番という背景には、この分野で長らく事業を展開してきた同社ならではの問題意識があるようだ。青野氏の説明をもとに2つの図を使って、その問題意識を浮き彫りにしてみよう。
まず、図1が多くの企業における情報共有の現状を表している。すなわち、各部門で情報共有が閉じられており、情報がサイロ化されている状態である。
多くの企業における情報共有の現状
こうした状態では、例えば、営業の情報を営業部門以外の人たちが見ることはできない。また、チャットは部門やプロジェクト単位でグループチャットを作っており、クローズで運用している。さらに、コミュニケーションが業務アプリと分離しており、部門を横断して検索できないといった問題を抱えている。
つまり、「情報のサイロ化が進むとともに、現場の力が生かせない」わけである。
そうした状態から脱却するにはどうすればよいか。それを示したのが、図2である。すなわち、部門ごとの障壁をなくし、企業全体で情報共有を図っている状態である。
企業全体で情報共有を図っている状態
こうした状態になれば、業務で使うデータベースや文書ファイル、コミュニケーションが、1つのプラットフォームでオープンに共有されることになる。また、個々人は主体的に汎用あるいは個別の業務アプリケーションを設置あるいは開発できるため、現場の業務内容が次々と可視化されるとともに、連携する業務の改善につながっていく形になる。
つまり、「日々の現場での改善が、連続的な組織全体の進化を引き起こす」わけである。青野氏は、「kintoneをこうした企業全体の情報共有プラットフォームとして活用してもらえるように磨き上げていきたい」と語った。