東京海上日動火災保険とキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)グループは3月6日、大規模な自然災害が発生した際の被害調査の対応を迅速化する「広域災害立会管理システム(ARO:Appointment&Route Optimizer)」の新機能を開発したと発表した。被災者による立会調査の予約と損害鑑定人(立会調査の専門担当者)の割り当てなどのワークフローを自動化・最適化し、保険金支払いまでの期間短縮を目指す。
AROでは、被災した損害保険の契約者が電話やウェブ、モバイル端末から立会調査(保険会社が行う物件の損害状況確認)を予約し、予約状況や調査する内容などと損害鑑定人のスキルデータなどを照合して、立会調査のスケジュールや損害鑑定人の訪問ルートを自動的に立案する。
「広域災害立会管理システム」新機能イメージ(出典:東京海上日動火災保険)
台風などによる大規模な自然災害では、被害が広域に及ぶだけでなく、被害内容も例えば、河川や海の近くでは浸水、山間部では土砂崩れといったように地理的な条件によって大きく異なる。また、損害鑑定人の専門スキルも多様だという。
災害が発生すると、保険会社は被災地の近くに臨時の対応拠点を設けて、多数の契約者から寄せられる調査依頼に対応している。しかし、被害場所や被害状況に応じた損害鑑定人の割り当てや、道路の通行止めなどの影響を踏まえた損害鑑定人の訪問ルートなどの策定は手作業で行わざるを得ない場合が多いという。このため、調査日の確定から保険金の支払いまでに長期間を要することが大きな課題になっている。
東京海上日動では、調査対象となる物件の情報や損害鑑定人のスキル情報などをシステムで統合管理できるようにしており、新たに契約者がオンライン上で調査を予約したり空き状況を確認したりできる仕組みを開発した。
「立会最適マッチングシステム」のイメージ(出典:キヤノンマーケティングジャパン)
また、予約内容と損害鑑定人のスキルを照会して損害鑑定人の訪問ルートを自動的に立案する「立会最適マッチングシステム」をキヤノンMJとキヤノンITソリューションズが構築。クラウド環境で運用でき、災害対応現場などの環境でもシステムを利用できるという。
立会最適マッチングシステムでは、キヤノンITソリューションズの数理技術部が開発した「RouteCreator」を活用。RouteCreatorでは、DTW法(Dynamic Time Warping:動的時間伸縮法)を利用しており、キヤノンMJグループでの社用車を効率的に運用するための分析やルート最適化などで実績があるという。
新システムは2019年7月に試験導入され、同年秋に発生した台風19号などによる大規模災害での対応で試用を行った。自然災害による損害での保険金の支払いは一般的に30日だが、試用ではこの期間が大幅に短縮されたといい、同年12月から正式に稼働している。