本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本IBMで執行役員の纐纈昌嗣氏と、日本マイクロソフトでMicrosoft 365 ビジネス本部長の山崎善寛氏の発言を紹介する。
「急増する在宅勤務のセキュリティリスクに対してしっかり支援していきたい」
(日本IBM 執行役員の纐纈昌嗣氏)
日本IBM 執行役員の纐纈昌嗣氏
日本IBMが先ごろ、今後のセキュリティ事業の方針についてオンラインで記者説明会を開いた。同社 執行役員でセキュリティー事業本部長を務める纐纈氏の冒頭の発言は、その会見で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って急増する在宅勤務に対するセキュリティニーズを問われ、同社の姿勢について答えたものである。
纐纈氏は今後の事業方針について、「セキュリティをお客さまのビジネス構造に組み込みましょう」をキャッチフレーズとして、ビジネスを止めない包括的なセキュリティサービスやマルチクラウド環境での脅威インテリジェンスの提供、インテリジェントなアクセス管理の実現、「IBM Cloud Pak for Security」の機能強化などを行っていく構えだ(図参照)。
日本IBMのセキュリティ事業方針(出典:日本IBMの資料)
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは 纐纈氏の冒頭の発言に注目したい。在宅勤務に対するセキュリティニーズを問われた同氏は、次のように答えた。
「まずはお客さまが使用するデバイスをどのように管理するか、コンプライアンスへの対処をどうするか、といったことが課題になってくる。それに対してIBMでは、リモートワークに対応したセキュリティ製品として、IBM MaaS360 with Watson(以下、MaaS360)というツールを提供している」
さらに、こう続けた。
「短時間で利用できるようになるMaaS360は、かねて30日間無料でお試しいただけるようにしているが、今回の新型コロナウイルス対策における在宅勤務にしばらく使っていただけるように、無料での試用期間を90日間に延長して提供する取り組みを始めた。こうした機会をぜひ活用して、今の難局を乗り切っていただきたい」
MaaS360は、企業のIT部門がPCだけでなくスマートフォン、タブレット、IoTデバイスまで容易に管理でき、セキュリティ対策を簡素化できる統合エンドポイント管理(UEM)ツールである。「with Watson」であることから、コグニティブの洞察、コンテキストの分析、クラウドを活用したベンチマーク機能などを備えており、各種デバイスの詳細な動きを把握することができるという。
MaaS360の話は、今回の事業方針には含まれておらず、日本IBMのサイトを見ても無料試用期間の延長などの告知は、筆者が確認した範囲では見当たらなかったので、纐纈氏の説明を受けてここに記しておきたい。
ただ、MaaS360の取り組みからは、IBMというと大手企業向けの大掛かりな仕組みしか手掛けないイメージがあるが、案外、小回りの利いた動きも行っているとの印象を持った。この辺り、もっとPRしてもよいのでは、と感じた。