コロナショックで「産業」はどう変わるのか。本連載では前回「働き方」の変化について考察したが、今回は大きく変化しそうな産業に焦点を当ててみたい。
中国のレポートが注目する5つの産業
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が5月末まで延長され、政府や自治体による外出自粛や休業の要請が当面続くことになった。経済のさらなる落ち込みは避けられず、その影響を大きく受けた産業は非常に厳しい状況に陥っている。
現時点でこの状況から少しでも脱するには、コロナ禍を「収束(混乱が落ち着くこと)」させる方向へ個々人が注意を払うしかない。その一方で、「終息(混乱が完全に終わること)」には時間がかかると見られていることから、今後このウイルスとどうつき合っていくかが肝要となる。その観点からすると、それぞれの産業はこれからどう変わっていくのか。ここでは、特に大きく変化しそうな産業に焦点を当ててみたい。
どの産業が大きく変わりそうか。そう考えながらリサーチしていたところ、興味深い調査レポートがあったので紹介しておこう。
日本CTO協会が先頃公開した「アフターコロナの中国で消費急増が予測される5大産業の現状と未来」の日本語版がそれだ。原版は中国・北京のデータ分析会社であるAnalysys社(易観集団)が作成し、公開したものである。
このレポートでは、コロナ禍のピークを過ぎて経済が再開しつつある中国において、タイトルの通り、消費急増が予測される5つの産業を取り上げてさまざまな分析と考察を行っている。中国の話ではあるが、その内容はグローバルで共通するところも少なくない。
「5大産業」として挙げているのは、「教育」「医療」「小売」「旅行」「交通」。筆者なりの視点で要点を挙げておくと、教育ではオンライン化によってパーソナライズされた教育へと進展。医療でもオンライン化に弾みがつき、医薬流通業界全体でのデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む。また、旅行もオンラインでのきめ細かいマーケティングが求められるようになる。交通については、ライドシェア(車の相乗り)市場が急速に回復するとともに、この分野のDXが国家安全保障レベルの議論となり、政府の投資が増加すると予想している。交通のところで、「国家」が前面に出てきたのは、中国ならではといったところか。