コロナショックはどうやら世の中を大きく変えてしまいそうだ。何がどう変わりそうか。この「一言もの申す」連載の中で、対象分野ごとに折りを見て取り上げていきたい。まずは「働き方」について考察したい。
踏まえておくべき「テレワーク実施率の上限は4割」
ここ数年、ITを活用した「働き方改革」が注目されてきたが、その中核要素ながらもなかなか普及が進まなかったテレワークによる在宅勤務が、新型コロナウイルス感染症対策によって、ここ2カ月ほどで大きく進み、まさしく働き方を変えざるを得ない状況となっている。
ということで、今回は「コロナショックで『働き方』はどう変わるのか」について考察したい。まずは、このテーマに関連して興味深い調査結果があるので紹介しておきたい。
第一生命経済研究所が先頃公表した「新型コロナウイルス意識調査関連レポート」によると、首都圏などに緊急事態宣言が発令される直前の2020年4月3日から4日、全国の20〜60歳男女1000人を対象にインターネットを通じて調査したところ、図1に示した「テレワークの経験および可否」において、そもそも「テレワークができない業務である」との回答が全体で58.7%と約6割に及ぶことが分かった。
テレワークの経験および可否(出典:第一生命経済研究所「新型コロナウイルス意識調査関連レポート」)
この結果からすると、テレワークの実施率は4割が上限ということになる。筆者はかねて全産業を対象にすれば、テレワークができない業務が半分以上になるだろうと見ていたので、やっぱり、という印象だ。IT系の市場調査からはなかなか浮かび上がってこない数字である。
一方、この調査では、テレワーク経験者(「既にテレワークを行ったことがある」と回答した人)は全体で16.9%だった。ただ、実施率は緊急事態宣言後に上昇し、他の複数の市場調査から直近では3割半ばになっているものと見られる。
もう1つ、同研究所の調査結果を紹介しておこう。図2に示したのは、「今後の働き方の見通し」である。「テレワーク(在宅勤務)がしやすくなる」との回答は全体で36.4%だった。従業員規模別ではこの割合に差が出た結果となった。
今後の働き方の見通し(出典:第一生命経済研究所「新型コロナウイルス意識調査関連レポート」)
調査レポートをまとめた同研究所 主席研究員の的場康子氏は、この結果について、「新型コロナウイルス感染拡大による働き方の変化で危惧されることは、企業間格差の広がりだ。感染拡大予防策として在宅勤務などの体制を整え、それを生産性向上につなげて事業継続することができる企業とそうでない企業との差は今後広がる恐れがある」と警鐘を鳴らしている。