1月23日に開催されたTechRepublic Japan 生産性向上セミナー「相手が理解してこそ情報は共有化される 生産性向上で考えたいこれからのコミュニケーションのあり方」にKDDI ソリューション事業企画本部 ネットワークサービス企画部 部長 梶川真宏氏が登壇。「クラウド音声サービスが変える仕事と職場環境」と題して、クラウド活用が進む中で、電話を音声ネットワークで構築するメリットと効果を解説した。
KDDI
ソリューション事業企画本部 ネットワークサービス企画部 部長
梶川真宏氏
クラウド化によって働きやすさと生産性は向上する
より柔軟な働き方に向けて、多くの業務とコミュニケーションがクラウド化している。メールやチャットといったコミュニケーションツールはもとより、財務会計や生産管理システムなどもクラウドを活用する時代だ。ただ、日本独自の文化としてオフィスに依然として数多く残っている機器もある。その代表的なものが電話だ。
梶川氏はまずそうした状況に対し「総務省の通信利用動向調査などを見ても、コラボレーションサービスを筆頭にクラウド化が進んでいることが確認できます。しかしその対象には電話サービスは含まれていません。電話をクラウド音声サービスへと移行することにより、新たな可能性が生まれます」と指摘した。
モバイルとクラウドの活用によって、人の動きに紐付いて、いつでもどこでも働くことができる環境が整備されつつある。働き方改革の取り組みも大企業では約8割、中堅企業でも半数が何らかの取り組みを実施している状況だ。こうした働きやすさを実現していくうえで需要になるのがツールの活用だ。
「ツールを積極的に活用することで働きやすさが向上することはさまざまな調査や研究からも明らかです。SNSやチャット、ビデオ会議などのビジネスICTツールを積極的に使っていない場合は、利用者の39%しか働きやすさを感じませんでしたが、いずれかのツールを積極的に使っている場合、この割合が53%に上昇します。またクラウドサービスを活用することで生産性に25%もの差がついたという調査もあります」(梶川氏)
オフィスに残る電話についてもサービス化により働きやすさや生産性向上に寄与することが期待されるのだ。
「電話文化」や「機器の壊れなさ」が障壁に
ではなぜ電話のクラウドサービス化が進んでいないのか。音声アプリという点では、ユニファイドコミュニケーション(UC)などのコラボレーションサービスが提供されているが、日本ではまだ電話機が多く残ったままだ。梶川氏はその理由として大きく3つの障害があるからだと指摘する。
1つめは、文化の違いだ。日本では、机を島のように配置して島ごとに密接なコミュニケーションを図ることが多い。メモや内線番号で電話を取次ぐことで、情報を共有することを重視する。個人ごとにスペースを区切って仕事をする欧米とは異なるスタイルだ。
2つめは、番号制度の存在だ。0AB-J番号と呼ばれる先頭の0と任意の9桁の数字で構成する固定電話が重視される、企業の所在確認や信頼性の確認などにも使われており、固定電話がないことが取引のさまたげになる場合もある。
3つめは、コストの問題だ。PBX機器自体が信頼性が高く、故障のない状態で長期にわたって利用することができる。一方で、固定電話のIP化やスマートフォンへの転送などを行うには機器の入れ替えや、追加の装置を設置しなければならないなどコストがかかる。旧来の設備が特に問題なく利用できるのであれば、利用し続けようとする選択は一方で正しい判断といえる。
だが、梶川氏によると、固定電話の利用が減っているのも事実だ。総務省の調べでは、2010年に17億500万時間だった固定電話機の通話時間は、2016年には10億3900万時間へと、6年間で約4割も減少しているのだ。
KDDI音声基盤を用いた新サービス「Cisco Webex Calling」
加えて、音声サービスに対するユーザーの意識も変わってきている。例えば、家庭ではスマートスピーカーに話しかけて操作したり、AIによる自動発信や自動応答に対しても抵抗感がなくなってきたりしている。梶川氏は次のようにクラウド電話サービスの重要性を訴える。
「電話は確かに重要なツールです。とはいえ、急速に減少している固定電話だけのコミュニケーション環境にこれからも投資し続けることができるでしょうか。これからの時代は、VUCAと呼ばれるような、激しい変化のなかで先が見通しにくくなる時代です。だからこそ、クラウドのような変化に柔軟に追随できるアプローチが注目されています。ビジネスの電話についても、もっと自由にしていくことが求められています」(梶川氏)
そんななか、KDDIが2019年10月から提供を開始したのが「Cisco Webex Calling」だ。Cisco Webex Callingは、Cisco WebexのクラウドとKDDIの音声ネットワークを活用した新しいクラウド音声サービスだ。
「月額ID課金のフルクラウド型PBXです。宅内にゲートウェイ設備や音声回線は不要で、インターネット回線で利用することができます。0AB-J番号を利用することができますし、番号ポータビリティにも対応しています。利用デバイスについても働く環境に合わせて選択することが可能です。お客様からも、『長年使ったPBXはこれでクラウド化ができる』『事業所の改廃や移転が多く困っていたがこれで対応できる』『マルチキャリアで使えるのでモバイル活用が進められる』といった評価をいただいています」(梶川氏)
モバイルを固定電話機として使え、内勤者のテレワークなどの新しい働き方にも対応
0ABJ番号や番号ポータビリティに対応するほか、スマートフォンやパソコン、固定IP電話といったマルチデバイスに対応しているため、専用アプリを入れてログインさえできれば社外からでも会社の固定電話番号で発着信できる。そのため、固定電話で社内外のコミュニケーションを取っていた内勤者でも、例えばBYOD端末でテレワークを実施できるようになる。また、PBXの純粋なクラウド化であるため、固定電話機の利用が可能で、利用する番号にも制約がなくなり、PBX機能も利用できる。
「電話機はもちろんモバイルでもピックアップ、同時鳴動ができます。代表発着信、保留転送、着信転送、自動音声応答、パーク保留などにも対応しています。これは日本の島文化に必要な機能です。また、働き方を変えるための使い方もできます。今、日本ではテレワークの環境整備が急務な中、固定電話をどうしていくべきかの検討も始まっていると聞きます。会社の固定電話への入電を、アプリが入った自身のスマートフォンなどで受けることができれば、オフィスで働いているときと同じようなコミュニケーションが実現できるのです」(梶川氏)
通話品質も安定しており、クラウド上のカスタマーポータルを使って顧客自身が設定を柔軟に変更することができる。KDDIとCiscoが提供するさまざまなサービスをワンストップサービスとして利用することもできる。
最後に梶川氏は「固定電話のクラウド化によって、これまでの文化を守りながら、社員の働き方を変えていくことができます。クラウドサービスとしてこれから先も進化を続けていきます」と話し、講演を締めくくった。