前回に引き続いて今回も「ID」のお話です。新型コロナウイルスの影響から企業ではテレワークの導入が進んでいます。そのためにゼロトラストや社外のネットワークでも、PCを管理できる環境が必要であるとお話ししました。その流れは連載第5回の最後で触れた通りですが、今回は「運用された状態のデバイスをサービスとしてユーザーが直接受けるためにも、サービスを受ける人を特定するIDが重要になる」という部分について掘り下げ「As a Service」「サブスクリプション」にとってのIDの重要性を説明します。
Device as a Serviceは、「as a Service」とあるように、サービスとして提供されます。サービスである故に、柔軟に変化できるべきです。Software as a Service(SaaS)では、サービス提供業者が頻繁なアップデートによって提供する価値を短期間で向上させることが可能です。向上した価値を価値として感じるのが人(=体験)であることは、言うまでもありません。そのため、SaaSではサービスの価値が向上したことを「体験の向上」と表現することもよく見られます。
Device as a Serviceにおいても、この「体験の向上」というファクターは重要です。それは、連載の第3回で「価値が下がることなく、むしろ上がっていく」ことがサブスクリプションビジネスには重要で、そのために「As a Service」であるべきと申し上げました。サービスである故に、柔軟に変化が可能であり、むしろそれがない「サブスクリプション」「As a Service」はまがいモノと言っても過言ではないでしょう。
それでは、その変化の起点とは、どこにあるべきでしょうか。
当然ですが、顧客です。サービス提供業者は、顧客の満足度を向上し、ひいては解約を阻止するために顧客の体験の向上に努めます。クラウドサービスがサブスクリプションで提供されるのは、常に価値の向上、体験の向上がなされるからと申し上げました。サービス提供業者の視点では、価値の向上・体験の向上がなく、顧客に「必要がない」と判断されれば解約になり、収益が途絶えます。
サブスクリプションは、販売のライセンスと違い、最初にライセンス料が入ってきません。その何十分の一の月額使用料を継続して得られないと、サービス提供業者は儲けることができません。サブスクリプションが世の中に浸透しつつあるのは、サービス提供業者と顧客企業がWin-Winになれる仕組みであるからと言えます。
そして、Device as a Serviceは「運用された状態のデバイスをサービスとして提供する」というものです。顧客としてこのサービスを受ける人は、主は利用者たる従業員(=ユーザー)になります。もちろんIT管理者が選定し、コントロールするサービスなので、管理者が全く関係しないわけではありませんが、サービスはユーザー中心であるべきです。