本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、アカマイ・テクノロジーズ職務執行者社長の山野修氏と、SAPジャパン バイスプレジデントの稲垣利明氏の発言を紹介する。
「これからはリモートワークが当たり前の働き方になっていく」
(アカマイ・テクノロジーズ職務執行者社長の山野修氏)
アカマイ・テクノロジーズ職務執行者社長の山野修氏
アカマイ・テクノロジーズは先頃、リモートワークとセキュリティをテーマにオンラインで記者説明会を開いた。山野氏の冒頭の発言はその会見で、「いま求められる新しい働き方」について語った中でリモートワークに対する見解を述べたものである。
山野氏は、新型コロナウイルスの感染対策として、いま求められる働き方について、次の4つの事柄の「これまで」と「これから」を説明した。
1つ目は、これまで対面で行ってきた会議や打ち合わせ、イベントなどが、これからはオンライン会議やバーチャルイベントになっていくことだ。従って、現在ツールとしてオンライン会議用ソフトウェアが爆発的に普及しているが、山野氏はこの種のツールが今後さらに進化していくだろうと予見している。
2つ目は、ここ数カ月で在宅勤務が急増し、これまで多くの企業がリモートワーク時にVPN(仮想私設網)を通じて社内ネットワークと接続する仕組みを採用してきたが、それではVPNの接続能力に限界が来る可能性があることから、これからは「場所や機材に制限を受けないようなアプリケーション接続、もしくはリモートアクセスが求められるようになる」(山野氏)と述べた。
3つ目は、これまでだと社内で使用しているアプリケーションは正社員だけでなく非正規社員やパートナー企業の関係者も社内ネットワークにアクセスできるケースが多かったが、リモートワークになると正社員しかアクセスできず、業務がスムーズに流れないことがあった。こうしたことも、これからはユーザーやグループごとの適切なアクセス制御を行う形で解消していく必要がある。
4つ目は、日本特有のハンコ決裁がまだ残っていることだ。リモートワークにもかかわらず、書類を出力してハンコ決裁をもらうために出社しなければならないという非効率なやりとりが、日本の多くの企業でまだまだ継続されている。これも新しい働き方では、電子サインやオンライン決裁になっていくだろう。
その上で、山野氏は「在宅勤務の急拡大をセキュリティリスクにしないようにすることが重要だ。そのために、ゼロトラストネットワークによる安全なリモートワークを追求すべきだ」と強調した。(図参照)
山野氏が示した「いま求められる新しい働き方」(出典:アカマイ・テクノロジーズの資料)
ゼロトラストネットワークとは、ファイアウォールやVPNに代表される従来型の境界防御モデルのセキュリティ対策が通用しなくなった現状を踏まえ、全てのトラフィックを信頼しないことを前提とし、検証することで脅威を防ぐというアプローチの考え方で、ここにきて注目を集めているキーワードだ。
ネットワークやセキュリティを熟知するアカマイのトップを務める山野氏のリモートワークに対する見解は、大いに参考になりそうだ。