富士通は6月11日、従来のさまざまなITサービス群を大幅に刷新し、新たに「FUJITSU Hybrid IT Service」として提供することを発表した。ハイブリッドクラウドのITインフラストラクチャーからアプリケーションまでをカバーするもので、2023年3月末時点で市場シェア25%を獲得し、関連事業で売上高1兆円を見込む。
「FUJITSU Hybrid IT Service」の全体像
FUJITSU Hybrid IT Serviceは、オンプレミスとクラウドハイブリッド環境に向けた総合ITサービスと位置づける。富士通グループのパブリッククラウドサービス群を刷新し、VMware/Red Hatベースのクラウド移行環境を拡充するほか、統合管理ポータルやセキュアな通信回線なども提供する。契約/課金もプレフィックスとサブスクリプションの2形態で対応する。
オンラインで説明を行った富士通 執行役員常務 デジタルインフラサービスビジネスグループ長の島津めぐみ氏
同日記者会見した執行役員常務 デジタルインフラサービスビジネスグループ長の島津めぐみ氏は、企業顧客のハイブリッドクラウド環境が進む一方で、さまざまな組み合わせの最適解を求めることが困難になっていると指摘した。FUJITSU Hybrid IT Serviceでは、ITインフラの水平方向(オンプレミス~クラウド)とアプリケーションの垂直方向(プラットフォーム~アプリケーション)の全体を網羅し、その構築から運用までをマネージドサービスを含め提供する統合ソリューションになると強調した。
ソリューション領域は、大きくITインフラ側の「デジタルインフラプラットフォーム」、アプリケーション側の「デジタルアプリケーションプラットフォーム」の2つになる。
デジタルインフラプラットフォームでは、従来のレッドハットベースの「FUJITSU Cloud Service for OSS」とヴイエムウェアベースの「FUJITSU Cloud Service for VMware」を「FJcloud」に一新し、それぞれ「FJcloud-O」「FJcloud-V」にリブランドする。
特にFJcloud-Vは、オンプレミスのVMware環境のクラウド移行で約7000社の実績がある富士通クラウドテクノロジーズのリソースを活用し、仮想サーバー無停止で移行できる信頼性などをうたう。FJcloud-Oについても、「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」への対応も含む政府クラウドでも利用可能な高信頼の拡張性を特徴に挙げている。また、サービスメニューも拡充し、従来のリソース共有型になる「Model 1」に加え、サーバー、ストレージ、ネットワークなどのリソースを必要に応じて専有型で利用する「Model 2~4」を追加する。
「FJcloud-O」と「FJcloud-V」のロードマック
この他に、クラウド/データセンター間のインターコネクト(セキュア接続)を短納期で可能にするメッシュ型ネットワークサービス「Digital enhanced EXchange(DEX)」や、オンプレミス/マルチクラウド環境を一元管理する「統合マネジメントポータル」、また「統合Security Operation Center(SOC)」「統合サービスデスク」などを2020年下期にかけて順次提供していく。
なお、デジタルアプリケーションプラットフォームについては、2020年第2四半期中に、レッドハットのOpenShiftをベースにしたコンテナーサービスを提供する予定だとした。
FUJITSU Hybrid IT Serviceの主な契約形態は、プレフィックス型とサブスクリプション型の2つになる。プレフィックス型は、これまで個別対応だった役務の内容を173種類のメニューにして顧客が自由に組み合わせて選択できるようにした。ここでは主要メニューをパッケージ化した4つのセットメニューも用意する。サブスクリプション型では重要課金と月額固定の2つのメニューがある。
プレフィックス型の仕組み
サブスクリプション型の仕組み
島津氏は、社会が新型コロナウイルス感染症への対応を強いられる中でも企業の半数がデジタルトランスフォーメーションの推進を続け、テレワークの拡大でIT環境が変化したり、基幹系業務システムのオンプレミスからクラウドへの移行も加速したりしているとした。その中でハイブリッドIT環境を選択する企業が多く、今回の施策はそうした企業に向けたものと説明した。
各種サービスの提供開始時期