松岡功の「今週の明言」

自らの存在意義まで掲げた大改革に乗り出した富士通社長の意欲と危機感

松岡功

2020-05-22 10:32

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏と、アズジェント 代表取締役社長の杉本隆洋氏の発言を紹介する。

「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく」
(富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏)

富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏
富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏

 富士通が先頃開いた2020年3月期決算の発表会見で、時田氏が新型コロナウイルスへの対応などを踏まえて今後の同社の方向性について明らかにした。その中で「パーパス」、すなわち同社の「存在意義」として打ち出したのが、冒頭の発言である。

 富士通は企業理念や行動指針などからなる「FUJITSU Way」を掲げているが、それとは別にパーパスを打ち出したのは、筆者が記憶する限り、歴代のトップの中でも時田氏が初めてだ。新たな存在意義を掲げるのは、新たな時代に確固たる存在感を発揮しようという意欲を感じる一方、このままだと存在感を失っていきかねないという危機感の表れでもある。果たして、時田氏の思いとは――。

 ということで、以下に、パーパスにまつわる時田氏の会見での発言を記しておこう。

 「今年で創業85年を迎える当社では現在、IT企業からデジタルトランスフォーメーション(DX)企業へ転身するため、ビジネスのみならず制度やカルチャーなど全方位にわたって改革を進めている。これまで長年にわたってテクノロジーを通じてお客さまに価値を提供してきたことに加え、これからはさらにグローバル企業として、社会の変革に向けて主体的に貢献する責任があると考えている」

 さらに、こう続けた。

 「今、世界は複雑に結び付きながら急速に変化する不確実な時代を迎えている。そうした中、世界の困難な課題を解決するためには、新たな考え方や手法、行動によって立ち向かっていく必要がある。そこで、改めて富士通は今後どのような存在になりたいのかを考え、私たちのパーパスを定義した。当社は今後、このパーパスに基づいた経営方針や事業戦略を実践していく」

 そして、このパーパスを実現するための行動として、図に示すように「自らの変革」「価値創造」「社会に信頼をもたらす」といった段階をしっかりと踏んでいくことを明言した。

パーパスを実現するための行動(出典:富士通の資料)
パーパスを実現するための行動(出典:富士通の資料)

 これから具体的に取り組むこととして、自らの変革では「データドリブン経営の強化」「DX人材への進化・生産性の向上」「全員参加型、エコシステム型のDX推進」、価値創造では「グローバルビジネス戦略の再構築」「日本国内での課題解決力の強化」「お客さまのDXベストパートナーへ」「事業の一層の安定化に貢献」――といった点を挙げた。

 このパーパスを筆者なりに解釈すれば、「DX企業として信頼される存在となり、人類の繁栄に貢献していく」といったところか。自らの存在意義まで掲げた時田流大改革に、コロナ騒動がどう影響するかも合わせて、今後の動きに注目していきたい。

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