Dell Technologiesは、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、世界13万人の社員が在宅勤務を行っている。在宅勤務に移行する前から、90%の社員がノートPCを所有するという環境を実現していた同社だが、それでも幾つかの課題が発生し、それを乗り越えるための取り組みが必要だったという。同社インド バイスプレジデント エンタープライズデータモビリティ&エンジニアリングCIO(最高情報責任者)リーダーのSheenam Ohrie氏に、在宅勤務に向けた取り組みについて聞いた。
――新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、Dell Technologiesはどんな形で在宅勤務に移行したのでしょうか。
Dell Technologiesインド バイスプレジデント エンタープライズデータ モビリティ&エンジニアリングCIOリーダーのSheenam Ohrie氏
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの企業が出張制限をしたり、在宅勤務に移行したりするなど、それまでの通常業務の継続が難しい状況に陥りました。それはDell Technologiesも同じです。
私は、バンガロールに在住していますが、3月13日から一度も出社していません。ただ、Dell Technologiesは、約5年前から働き方改革に着手し、既に90%の社員に対して、ノートPCを配布し、各種ツールを活用しながら、リモートで仕事ができる環境を整えていました。開発者、営業担当者、コンタクトセンター、工場、エグゼクティブといったように、社員の役割やポジションに合わせて最適なITツールを提供しており、その点では、業務を継続できる環境が設備されていたといえます。しかし、それでも幾つかの課題に直面しました。
――課題とは、どんな点ですか。
例えば、以前から在宅勤務の対象となっていなかった業務の一つにコンタクトセンターがあります。従来はオフィスに出社し、24時間のシフト体制で業務を行っていました。オフィスにはデスクトップPCが設置され、Avayaのソフトフォンを利用して、問い合わせに対応するという仕組みです。この体制を在宅勤務ができるように変更しました。2週間以内に4000台のノートPCを配布して、コンタクトセンター業務に必要となるツールを全て用意し、ノートPCからもソフトフォンを利用できるようにしました。在宅勤務でノートPCを利用しても、オフィスでデスクトップPCを使用するのと同じ環境を構築したわけです。
また、90%の社員にノートPCが配布されていたとしても、65%の社員がリモートワークを行うという水準を想定しており、実際に利用していたのは30%程度でした。正直なところ、90%の社員がリモートワークを行うことは想定していませんでした。この影響を大きく受けたのがVPNです。VPNについて実は、以前から社内では問題になっており、従業員満足度も低いものでした。特に、かつてのDellで導入していた機器がパフォーマンス上の課題を改善できない状況にありました。そこで、旧EMCで使用していたCisco SystemsのAnyConnectも合わせて刷新し、Palo Alto NetworksのGlobalProtectに一本化しました。GlobalProtectは高いセキュリティが提供され、安定性があり、パフォーマンスも高く、トラフィック管理やモニタリングもしやすいというメリットがあります。
これを一本化していたことが、コロナ禍においても大きなメリットを生みました。中国で感染が拡大した時期に、VPNを拡張する必要があると感じ、容量を3倍に引き上げるとともに、ネットワークを増強し、さらに、ファイアウォールも拡充しました。安定したネットワーク環境を整備できたことで、在宅勤務に変わっても、社員の生産性が落ちることはありませんでした。
ただ、国や地域によってリモートワークはしているものの、自宅に安定したネットワーク環境や仕事をする環境が整いにくい、あるいは継続的な電力供給が行われない地域もあります。そうした社員に対する支援も、しっかりと行うことが大切です。