本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米Box CEOのAaron Levie氏と、ヴィーム・ソフトウェア執行役員社長の古舘正清氏の発言を紹介する。
「私たちのミッションの取り組みはまだ始まったばかりだ」
(米Box CEOのAaron Levie氏)
米Box CEOのAaron Levie氏
Box Japanは先頃、企業のニューノーマル(新常態)化に向けてのBoxの取り組みと支援について記者説明会を開いた。オンライン形式の会見には、米Boxの共同創業者兼会長でCEO(最高経営責任者)を務めるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏が登壇。冒頭の発言は同氏が会見の中で、同社のミッションの取り組みについて語ったものである。
会見の全容については関連記事をご覧いただくとして、ここではLevie氏の発言に注目したい。
「変わりゆく働き方」と題して会見を行ったLevie氏は、まず「Boxは2005年の創業以来、人と組織の働き方の変革をミッションとしてきた」と語り、「そうした私たちのミッションが、今ほど重要だと感じたことはない」と打ち明けた。そして、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて「世界は3カ月前と根本的に変わった」と心境を述べた。
同氏はその変化について、これまでにない規模でオフィスワークから在宅勤務へのシフトが起きていることや、場所だけでなく働く時間の柔軟性も高まっていることなどを挙げ、「そうした状況の中でコラボレーションがかつてないほど重要になってきている」と指摘した。
表に示したのは、これまでとこれからの働き方における要素の違いである。その上で同氏は、「変化に対していかに的確に対応できるか。それが、企業にとって新しい世界で生き残り、成長するための鍵になる」と語った。
これまでとこれからの働き方における要素の違い(出典:Box Japanの資料)
ただし、デジタル変革(DX)の観点から「企業がこれから進むべき道は、従来のビジネスをそのままクラウドに移行することではない」とも警鐘を鳴らし、「テクノロジーやプロセス、ビジネスモデルといったことを根本から考え直す必要がある」と訴えた。
そうした取り組みの中心にあるものは何か。ここで同氏は「コンテンツ」を挙げた。そして、「取り組みの中心にあるコンテンツをいかに活用できるかが、企業にとってこれから非常に重要になる」と述べた。
その上で、「従来型のコンテンツ管理の手法では、むしろ業務を複雑にしてしまう。企業にとって必要なのは、コンテンツ、ワークフロー、コラボレーションをセキュアに一元管理できるプラットフォームだ」とし、「それこそがBoxのクラウドコンテンツ管理である」と強調した。
そして、最後にこう語った。
「私たちは自らのミッションに取り組んで15年が経過したが、進捗度合いで言えば、まだ働き方の変革の上っ面(うわっつら)に着手したに過ぎず、始まったばかりだ。これから、もっともっと働き方をシンプルにしていきたい」
Boxの成長とともに、IT業界のキーパーソンの一人として注目されるLevie氏のモチベーションの原動力は、ここにあるのだろう。話す言葉に同氏ならではのパワーを感じた会見だった。