IDC Japanは7月13日、デジタル変革(DX)を支える「デジタル人材」に関する調査結果を発表した。
IDCでは、デジタル人材に必要なスキルとして、人工知能(AI)・ビッグデータ・クラウドといった技術的な能力(ハードスキル)と、関係部署や社外との対人能力・業務変革やビジネス創造の企画能力(ソフトスキル)に区別している。
調査では、DXを実践中/実験段階/実施検討の段階にある各企業に対してアンケートを行い、これら2つのスキルのうち、どちらがより重要かを質問した。全体としては「ソフトスキルの方がより重要」が46.0%で、「ハードスキルの方が重要」の24.3%を上回った。
それぞれのスキルの取得方法については、ハードスキルでは社内外の研修受講やDXパートナーであるITサプライヤーによる協力などが上位に挙がった。ソフトスキルでは、社内外の研修受講の回答割合は高かったものの、ITサプライヤーに協力を求めるケースは比較的少なかったという。「デジタル人材育成におけるITサプライヤーの役割は、企業が必要とするスキルによって異なる」とIDCは指摘する。
ただ、今回の調査結果を「DXの長期的なロードマップを持っているか」「そのロードマップは経営計画と一体化しているか」という観点から4つの回答者グループ(下図参照)に分けて再集計すると、異なる状況が見えてくるという。
デジタル人材における「ハードスキル」と「ソフトスキル」の重要性比較:DXロードマップ状況別(出典:IDC Japan)
4つのグループのうち、DXを最も全社戦略の観点から実施していると考えられる「経営戦略/計画と一体化したDXロードマップを持っている」企業グループでは、DX人材の育成において「ハードスキルの方がより重要」とする回答率(32.4%)が「ソフトスキルの方がより重要」(29.4%)を若干上回り、全体の傾向とは異なる結果になった。
その上で、IDCは「全社戦略的にDXを進めようとする企業は、もちろんソフトスキルを軽視しているわけではなく、技術とビジネスのバランスの取れたスキル強化を行おうとしているものと見られる」と分析する。また、ハードスキルの中で重要視するスキルを見ると、「内製化」につながる領域が他に比べて多く、技術的なスキルを社内に蓄積し、内製化されたデジタルアプリケーションを提供することで、差別化を図ろうという意図が見えるとする。
この企業グループでは、人材育成方法においてもITサプライヤーを含む外部リソースの活用を積極的に行ったり、DX組織のリーダー層から担当層まで外部人材を登用したりといった傾向が見られたという。
デジタル人材は、組織内の業務変革や新規ビジネスの創出をリードする役割を担っており、外部からの新しい見方を取り入れたり、新たな技術を学んだりと、その育成にはさまざまな施策が必要になる。企業は、それを個人の自助努力に任せるのではなく、DXと同様に組織的・戦略的に進めていく必要がある。
IDC Japanのリサーチバイスプレジデントである寄藤幸治氏は、「ITバイヤーは、中期的なデジタル人材育成のロードマップをDX計画や経営計画とともに策定すべきである。また、技術的なスキル、つまりハードスキルの社内蓄積の必要性を再認識し、それらを活用した差別化を行うべきである」とコメントしている。