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「分かった中小企業のDXの本質」--BAISOKUの主張

田中克己

2020-07-01 07:00

 中小企業にもデジタル変革(DX)の波が押し寄せている。ただし、新しいビジネスの創出など大企業のDX化とは少し異なる。中小企業のIT化を支援するBAISOKUの吉沢和雄代表取締役は「利益を出せる仕組み」と説く。早く安く作るだけではなく、稼げる仕組みの業務システムにするということだ。

 2007年2月に創業した同社は、業務システムの開発期間と費用を3分の1にする手法を確立したという。その考え方は分かりやすい。要件定義から始まり、設計、開発、テスト、修正、納品という一般的なシステム開発工程を踏んでいたら、開発の時間も費用もかかるのは当然のこと。そこで、要件を固めないまま、顧客と一緒に試作システム作りを始める。吉沢氏によれば、アジャイル開発とテンプレートを使った手法に近いが、いろんな機能やツールを持つ自社開発した統合業務システムから不必要な機能を削除し、クラウドなどにコピーしたものだという。

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 そもそも中小企業の経営者やIT担当者らがIT企業に「こんなシステムが欲しい」といった要件を明確に伝えるのは容易なことではない。ハードウェアやソフトウェアの性能、機能、価格を説明しても、経営者に投資効果は伝わらないだろう。そうした課題を解決するため、同社はフレームワークに49個の機能部品や開発ツール、保守ツールなどで構成するひな形となる統合業務システムを用意した。経営者らの要望を聞いて、統合業務システムの中から必要な機能だけを取り出して、2~3週間で試作システムを作るもので、顧客の要望の5~6割程度を満たせるという。

 その試作システムの機能や使い勝手を触りながら微調整を繰り返し、満足できるものに仕立てていくので、稼働には最低3カ月かかるという。マスターを作成したり、過去のデータをクレンジングしたり、エンドユーザーに研修したりもするからだ。これら初期費用は最低200万円になるが、顧客の要望を聞いて「200万円ならこれとこれができる。リターンは400万円で、1年で投資は回収できる」と、機能と投資に見合う効果を説明する。稼働後の使用料は月額6万円以上で、業務システムの運用・保守や改善・改良などが含まれている。データを分析して利益改善を図るレポートを月1回のペースで提出し、対策なども議論する。

カギは動力源を人力からITにシフトすること

 改善のポイントは、粗利益をリアルタイムに把握すること。早く安く業務システムを作り、課題を解決しても、利益を確保できるとは限らない。まずは、経営者にコストや利益を意識させる。例えば、黒字化には粗利益率が最低40%と分かったら、日々の変化からどの項目を増やし、どの項目を減らすのか一目で分かるようにグラフや色で表示し、40%を割り込んだら、製造業なら在庫の削減といった何らかの手を打つ。

 吉沢氏によると、中小企業の経営者は売り上げを重視・意識して頑張るが、「頑張ることと利益は一致しない。逆に付加価値を生まず、仕事を増やすだけになる」という。ここに大きな問題がある。

 その典型が売上拡大を人力に頼り、賃金の安い労働力を確保して長時間労働をさせる。だが働き方改革はそんな職場環境を許さない。人材不足もより深刻化する。そこで、「動力源を人力から365日・24時間働くITに変える」(吉沢氏)

 そんな業務システムをクラウドに構築することを提案する。稼働した業務システムには次々にデータが貯まっていく。それを分析して改善すべきことを顧客に提示する。こうした改善を繰り替えしながら、利益を出す業務システムに進化させていく。「分析した結果から無駄や無理なプロセスを見つけ出す。つまり、利益を制約するボトルネックを取り除く」(吉沢氏)

 BAISOKUは顧客企業の開拓にも力を入れる。現在、同社のクラウドベースの業務システムを開発・運用する顧客は約20社で、介護や製造、イベント、営業支援などと業種はさまざまだという。「(税理士など)士業からIT導入補助金を使った業務システムの新規案件が持ち込まれるケースが最近増えている」と、もう1人の代表取締役である牧貴子氏が明かす。

 地域の中小IT企業から相談を受けることもある。そんな彼らをパートナーにと考えている。「利益を生む仕組み作りという考え方に賛同するIT企業らにパートナーになってほしい」(吉沢氏)

 ITベンダーのソリューション提供とは異なるアプローチが浸透するのか今後も注目する。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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