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足踏み状態から成長に転じるウェブ会議のブイキューブの新施策

田中克己

2020-11-27 07:00

 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、ウェブ会議システムを導入する企業が急激に増えている。感染対策として、在宅勤務などリモートワークを実現するためで、会議や商談などの打ち合わせからセミナー、研修などと利用範囲も広がっている。その中で、ユーザー数を爆発的に増やしているのが、「Zoom」や「Microsoft Teams」「Cisco Webex」などの米国勢だ。Zoomは2021年度第2四半期(2020年5~7月)の売り上げを前年同期比で3倍近く伸ばす。Teamsの1日当たりの利用者も4月の7500万人から10月に1億1500万人に増えたという。 

 そうした中で、1998年の創業時からテレビ会議システムを手がけるブイキューブの業績はここ数年、60億~70億円の売り上げで足踏み状態だった。2019年度は2億円超の営業損益になり、電子黒板サービス事業やラーニングマネジメントのアイスタディ、インドネシア子会社などを売却したり、海外事業を再編したりするなど構造改革を実施し、ウェブ会議システムのSaaSと関連するサービス提供による事業を強化した成長への中期経営計画を策定した。

オンラインイベントなどによる売り上げ倍増計画

 ブイキューブの間下直晃社長はこのほど開催したオンライン事業戦略説明会で、この2年間で売り上げを倍増する目標と達成施策を発表した。具体的な数値目標は、売上高が2020年度(12月期)の79億円から2022年度に153億円に、営業利益を2020年度の9億円から2022年度に35億円になる。新型コロナの感染拡大などによるリモートワーク市場の拡大が背景にあるものの、同社はウェブ会議システムそのものによる大きな成長を見込んではいない。ウェブ会議システムを活用したオンラインイベントや公共施設などに設置する個室会議スペースなどの新規ビジネスになる。Zoomなど海外製品との直接競合を避ける作戦で、「グローバル大手にはできないもの」(間下氏)だという。

ブイキューブの業績推移
ブイキューブの業績推移

 最も需要拡大を期待しているのは、ウェブ会議システムの技術やサービスを駆使するオンラインイベントだ。その活用の一つが株主総会のオンライン化で、株主の本人確認や認証から質疑応答、議決行使などの仕組みを提供したり、総会現場に人を派遣し、株主総会のオンライン化をサポートしたりする。

 こうしたイベントの運営は、リアルとオンラインの組み合わせで、各々のメリットを取り入れられる。会場に参加したい人、リモートで参加したい人といった場所に制限なく人を呼び込めて、「運用コストも安くなる」(間下氏)。双方型イベントによる一体感を醸成し、参加者の行動履歴などのデータを取得し、一人ひとりへの個別アプローチも可能にする。「その人がどんなイベントに興味を持っているかなども分かる」(同氏)。個別質問への対応や、参加者同士のコミュニケーションと商談を可能にする機能も用意する。オンラインよる交流の難しさの課題を解決することになる。

 オンラインイベントの成否は、現場のサポート要員による支援にもある。対応したイベント数は2019年度の2000回超から、2020年度に5000回弱、2022年度に2万回超へ増やし、サポート要員を現在の約200人から大幅に増やす計画だ。同事業の売り上げも2019年度の12億円から2020年に23億円、2022年に81億円を見込んでいる。

 「サードプレイス」と呼ぶリモートワークの場所貸し事業の成長も期待する。リモートワークが進展する中でも、実は「出社したら、オフィスに取引先とオンライン商談する場所がない」といった問題が生じ始めている。なので、同社は「外部との打ち合せに必要な遮音性のある会議室の需要が拡大する」とし、オフィスビルや複合施設、鉄道構内など公共・商業施設に個室会議スペース「テレキューブ」を2019年度の約400台から2020年度に約2000台、2022年度に8000台弱へと設置台数に増やす計画を立てる。「設置場所も都心からスーパーなど郊外へと広げる」(間下氏)などし、同事業の売り上げを2019年度の約5億円から2022年度に約19億円と4倍近くにする。

 これら新しい事業の成長を支えるウェブ会議システムそのものの売り上げ規模は50億円弱で推移すると見ている。「市場拡大は一巡し、飽和期に入りつつあるからだが、キャッシュカウ(財源)として、安定的な収益を見込んでいる」(間下氏)。もちろん、リモート化に関する経験やスキルを生かしたサービス提供など付加価値を高める。電子カルテやオンライン診療アプリとの連携や、人材採用管理システムに組み込んだオンライン面接といった新しい使い方を開拓していく。災害時に現場とのリアルタイムな映像通信など新しいウェブコミュニケーションも期待する。

 さらに、ウェブコミュニケーションから取得するデータ活用へとビジネスモデルを進めて、間下氏は「日本でナンバーワン、アジアでナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。成長への施策がグローバル大手との戦いに、どんな効果を生み出すのか、同社の次の一手に注目する。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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