IDC Japanは12月7日、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)動向調査の結果を発表した。DX推進企業では、「ビジネス戦略とDX戦略の長期的、全体的な連携を強め、業務のあらゆる面においてデジタル技術を活用し変革しようという意識が強い」(同社)としている。
調査は10月、DXに関わっているマネージャー以上の200人を対象に、DX実施の目的、組織体制、課題、技術基盤、KPI(重要業績指標)などを尋ねた。
これによると、新型コロナウイルス感染症がDXに与えた影響は限定的だったことが判明した。回答企業の69%が「DXの領域、予算、体制が拡大」「優先順位の変化や取捨選択はあるが継続する」「以前と変わらず推進する」とした。また、COVID-19の感染拡大が一般的に在宅勤務など働き方の見直しを迫ったが、DX推進企業では、それに加え、社内業務プロセスの見直しや、データや情報を活用しようと考えるところも多いことが分かったとしている。
COVID-19の感染拡大によるDX推進への影響(出典:IDC Japan, 2020/12,n=200)
DXへの取り組み状況は、「DXを企業戦略と全体的、長期的に連携させている企業(戦略一致企業)」が前年の同調査と比較して8.1ポイント増の51.5%だった。実際にDXに取り組む企業で、ビジネス戦略とDX戦略を一致させることは当然になっているという。
また、戦略一致企業と「DXを企業戦略と部分的、短期的に連携させている企業(戦略分離企業)」との比較でDXの優先度を聞くと、戦略一致企業は「ビジネスの継続性」「人材の卓越性」「業務の卓越性」「顧客体験」などあらゆる項目で、戦略分離企業よりも回答率が高かった。
同社は、DXをビジネスの変革と正しくとらえ、ビジネス戦略とDX戦略の一体化を図る企業が増加する一方、中長期的なDXロードマップの不在や、既存の基幹ITシステムとDXシステムとの連携不足は真の変革を実現する際の阻害要因になる可能性もあると指摘する。
ITサービス リサーチマネージャーの山口平八郎氏は、「新型コロナウイルスは社会、企業、顧客とのかかわり、働き方を将来にわたって大きく変えていく。国内企業は『コロナ後』の社会変化を見据え、今一度自社が目指すべきDXの方向性と、それを実現するための社内組織体制、インフラ、人材、業務プロセスの見直しを図るべき」と分析している。