前回は、Device as a ServiceによりIT資産管理の本来の意味が役目を終え、IT資産管理ツールが従来と同じように、さまざまな価値の中でPC運用を支えていくと申し上げました。そして、“As a Service”という考え方に基づいた新しいIT資産管理ツールが、Device as a Serviceを提供するために生まれてくると考えています。今回は、その新しいDevice as a Service時代のIT資産管理ツールの在り方を解説します。
なぜ、資産管理がPC運用の中心にあるのかと言えば、モノとして購入されたPCはIT管理者の手元で在庫され、新しい人が入社すればその在庫からPCを割り当てて、在庫が足りなくなるようであれば買い足されます。また、PCは故障します。その修理対応に2~3日かけてしまったら、その利用者である従業員の仕事を2~3日止めてしまうことになりかねません。なるべく早く故障したPCの代わりを渡してあげるためにも、ある程度余裕を持たせてPCを保有しておく必要があります。そのため、PCの在庫管理は重要です。
企業は、必ず必要な数よりも多くのPCを持っています。これを適当に管理してしまうと、無用なコストになります。PCは、昔に比べれば安くなったとはいえ、ボールペンやノートなどの消耗品のように扱えるほど安くはありません。また、セキュリティの問題もあります。必要と言われて出したPCが、実はマネージャーの机の中で眠ってしまっているなんてこともあります。「いつの間にか行方が分からなくなってしまった……」なんてこともあるでしょう。一般的な企業では、年1~2回棚卸しを行い、誰がどれだけのPCを使っていて、そこに無駄がないかを管理しています。
このように「モノ」としてのPCは、さまざまな理由から資産として管理する必要があります。では、それが「サービス」(=Device as a Service)であれば、PCはどのように管理されるのでしょうか。
サービスは、人に提供されます。モノがサービスを受けるなんて、聞いたことがありません。そのため、IDが重要ですと申し上げていますが、Device as a Serviceでは、このIDに対してPCが供給されるわけです。そして、契約を解除すればPCも回収される。これがDevice as a Serviceの基本です。また、「ユーザーダイレクトに提供されます」とも申し上げました。修理交換も適切なリードタイムでPCがユーザーダイレクトに行われます。IT管理者は介在しませんし、在庫を持っておく必要もありません。そしてPCでは、多くクラウドサービスが利用されます。そのサブスクリプションも一緒に提供されるべきです。人が入ってくれば、PC含めて必要なサブスクリプションを契約する必要があります。
今後のIT資産管理ツールは、このような運用を想定するべきです。もちろん、資産として持っているものなんて何一つないのですから、IT資産管理ツールというのは適切な呼び名とは言えないでしょう。どちらかといえば、現在どんなサブスクリプションを契約して、月間でどれだけのコストが一人当たりにかかっているかというような契約管理ツールという形になるでしょう。そして、それに発注が連動すれば、より柔軟で、無駄なコストを省いた運用がIT管理者に負担をかけずに実現することが可能になります。人が入ってきたらIDを作って、そのIDにDevice as a Serviceと必要なサブスクリプションを割り当てれば、その人に直接PCが届き、必要なクラウドサービスもそのIDで利用できるというわけです。