この1年で、リーダーシップのスタイルは大きく変わらざるを得なかった。ビジネスリーダーは、部下を対面で管理することができなくなり、「Zoom」や「Microsoft Teams」を使って、離れた場所でバラバラに働くチームを運営しなければならなかった。
多くの上司は、このリーダーシップのスタイルを自ら望んで選んだわけではなかった。ソーシャルディスタンスを確保した働き方は、選択の結果ではなく、やむを得ず導入されたものだった。多くのリーダーは、リモートからマネジメントを行うことにも、スタッフは指示をしなくても自発的に仕事をすると信頼することにも不安を感じている。
Harvard Business Review(HBR)が2020年夏に公開した調査のレポートによれば、上司の40%は部下を遠隔から管理することに対して自信がないと答えているという。また回答者の3分の1以上(38%)は、リモートワーカーはオフィスで働く労働者よりもパフォーマンスが低いと考えている。
一部の上司がソーシャルディスタンスを確保したリーダーシップに不安を感じている一方で、今回の変革で生じた劇的な変化の一部はこれからも残り、しかも長期的に定着する可能性があると目されている。
朝の通勤が戻ってきても、今後はかつてのように電車が満員になることはないかもしれない。多くの労働者は、在宅勤務が持つ柔軟性の恩恵を受けている。そのメリットを経験した彼らは、ある程度の柔軟性を認めてくれる企業で働くことを選ぶようになるのではないか。
要するに、急いで従来のようなオフィスに戻る必要はないということだ。しかし、企業の経営者は、ソーシャルディスタンスを確保したマネジメントが、孤立したリーダーシップスタイルになってしまわないように注意する必要がある。
その上、すでにかなりの労働者が燃え尽き症候群に陥っている。ロンドンビジネススクールLeadership Instituteの教授であり、アカデミックディレクターを務めるRandall S. Peterson氏は、このような厳しい状況下では、適切なリーダーシップのスタイルを導入することが重要になると話す。
Peterson氏は、上司にとってもっとも重要な問題は部下がどう感じているかを読み解くことであり、上司が作り出す対人関係の質が鍵になると論じている。
従業員はつながりと信頼を必要としている。しかし、部下を信頼することが難しいと感じる上司は、マイクロマネジメントを選択し、部下がうまくやっているかを確認するのではなく、これまでのように部下を監視しようとするかもしれない。