Microsoftは、中国に新たな「Azure」リージョンを開設する計画を明らかにした。同社は、クラウドサービスに対する需要が急増すると見込まれている中国での事業基盤の強化を進めている。
Microsoftは、中国の現地運用パートナーである21Vianetを通じて、2022年に中国で5番目のAzureリージョンを開設する。Microsoft Azureのリージョンとは、専用の低遅延地域ネットワークによって接続された特定境界内の一連のデータセンターだ。
新しいリージョンが開設されれば、中国で提供されるインテリジェントクラウド製品ポートフォリオの容量は今後数年で2倍になるという。中国の顧客は、Azureのコンピューティング、ネットワーキング、アナリティクス、IoTの各サービスのほか、生産性プラットフォームである「Microsoft Office 365」やビジネスアプリケーションである「Dynamics 365」「Power Platform」も利用できる。
Microsoftの中華圏担当最高経営責任者(CEO)Alain Crozier氏は、「次のリージョンは、地元の人材を育成し、イノベーションを促し、テクノロジーエコシステムを成長させるとともに、広範な業界の企業に活力を与え、さらなることを成し遂げられるよう能力を強化する」とコメントした。
中国では、国外のクラウドプロバイダーが自社のデータセンターを所有したり、運用したりすることは基本的に認められていない。このためMicrosoftは、長年に渡って中国のインフラ企業である21Vianetとパートナーシップを結んで同国内で事業を展開している。中国国内のAzureリージョンは、グローバルに運営されているリージョンと同じクラウド技術を使って構築されているが、Microsoftのグローバルなクラウドとは物理的に隔離されている。
Microsoftと21Vianetは数年前に初となる2つのAzureリージョンを立ち上げた。Microsoftは、中国市場で一般に提供される初の国際的なパブリッククラウドサービスになったとしている。
中国では特殊な制約があるにも関わらず、世界のクラウド企業は中国でのプレゼンス拡大に大きな関心を寄せている。中国市場はほかの市場と比較すればまだ小さいものの、中国でのクラウドサービスに対する需要の拡大がこれまで以上に加速している。
その傾向は新型コロナウイルス以前でさえ顕著に見られた。調査会社のCanalysは、2019年第4四半期に中国のクラウドインフラ市場は67%近い成長を見せ、33億ドル(約3400億円)規模に達したとし、グローバル市場の10%以上を占めていると発表していた。
それに加えて、中国では新型コロナウイルスによる世界的な健康危機によってデジタル化の波が押し寄せている。Microsoft AzureのゼネラルマネージャーOmar Khan氏は、2023年の中国のクラウド市場が460億ドル(約4兆9000億円)規模に達するという調査結果を引用している。中国企業の63%が、コロナ禍への対応として、クラウド関連のイノベーションを利用して自社の製品、決済、eコマース、自動化などのデジタル化を推進しているという。
それでも、中国企業が独占的な地位を維持しているのは明らかだ。Canalysによると、2019年第4四半期の中国における市場シェアは、Alibaba Cloudが46%以上を占め、続くTencent Cloudは18%、Baidu AI Cloudは8.8%となっていた。Amazon Web Services(AWS)も中国で、ChinaNetCenterやSINNETなどのさまざまな通信企業とパートナーシップを組んでいる。IBMも21Vianetと提携し、クラウドインフラサービスを管理している。
Googleは2020年、中国のクラウド市場へ参入するために進めていた「Isolated Region」(孤立した地域)プロジェクトを断念したとみられている。現地企業や政府機関などのサードパーティーを通じて、Googleの主要なサービスとは切り離して、クラウドサービスを提供する考えだったと報じられた。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。