開発者は、量子コンピューティングに関する能力を証明する公式の資格を得られるようになった。IBMは、量子コンピューティング開発者向けの認定資格試験を設けることを明らかにしている。この60問のテストに合格すれば、量子プログラムの開発と実行に必要なスキルを、少なくとも一定程度は持っていることが証明される。
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この認定資格は、(それほど驚くべきことではないが)IBMの量子コンピューティング用ソフトウェア開発キット(SDK)である「Qiskit」を利用することにフォーカスしたものだ。QiskitはPythonスクリプトをベースとするオープンソースプラットフォームで、これを利用すれば、量子アルゴリズムの実験から、クラウドベースの量子デバイスでのコードの実行まで、量子コンピューターを使ったさまざまな実験を行うことができる。
この新しい資格認定試験の受験者は、IBMのコンピューターやシミュレーターで、Qiskitを使って量子コンピューティングプログラムを作成し、実行できることを試験で証明しなくてはならない。それには開発者が、IBMのプラットフォームで量子回路を定義して実行したり、単一および複数の量子ビットゲートを実装したり、量子プログラムを作成したりするための知識を持っている必要がある。
IBM Quantumで量子教育とオープンサイエンスのグローバルリードを務めているAbe Asfaw氏は、米ZDNetの取材に対して、「Qiskitはこれまでに50万回以上ダウンロードされた、もっともよく使われている量子プログラミング用のSDKだ」と述べた。「私たちが開発者向けの認定資格試験でQiskitを利用しているのはそれが理由であり、この資格を得れば、もっともよく使われている量子プログラミング用SDKでスキルを証明できる」
Asfaw氏が指摘しているように、開発者は自分のスキルセットを広げるために、量子技術に注目するようになっている。それは単なる興味ではない。量子コンピューティング産業は、2030年までに650億ドル(約7兆円)規模の市場に成長すると予想されており、その過程で多くの雇用が生み出されるとみられているからだ。Qiskitのダウンロード数に何か意味があるとすれば、それは量子コンピューティングがもたらすチャンスに備えようとする開発者の数が増えているということだろう。
雇用側でも、量子コンピューティング人材への投資に魅力を感じ始めている。量子コンピューターは、創薬や金融などさまざまな業界で価値の創造を大きく加速させると予想されており、多くの企業は、すでに量子コンピューティングが今後ビジネスにどう役立つかを明らかにするために、この技術に対する理解を深めようとしている。
しかし量子コンピューターは、古典的なコンピューターとは根本的に違うものだ。量子コンピューターは、私たちがよく知るノートPCで使われている通常の「ビット」の代わりに「量子ビット」を使って、物質の粒子が微細なレベルで見せる複雑な振る舞いを利用し、指数関数的に高速な計算を可能にする。これによって、ほとんどの業界で強く求められている、コンピューティングパワーの劇的な増大が実現すると期待されている。