経験不足のジュニアひとり情シス
ひとり情シスになるまでのストーリーはさまざまで、多様なタイプがあります。その中で気になるのが、ひとり情シス経験3年未満の「ジュニアひとり情シス」です。今回は、ITスキルの不足を認識しているジュニアひとり情シスにフォーカスを当てます。
ひとり情シス・ワーキンググループが2020年12月実施した「ひとり情シス実態調査」と「中堅企業IT投資動向調査」の結果、ジュニアひとり情シスはひとり情シスの21.3%を占めていることが判明しました。
最近は大手ITベンダーで20年ほど経験した方が中堅企業のひとり情シスになるのも少なくありませんが、その方の経験年数が3年未満だとしても、そのスキルは決してジュニアレベルではありません。しかし、ジュニアひとり情シスの73.4%は自身のスキル不足を認識しており、スキル習熟に焦りを感じているようです。これは、ひとり情シス全体の15.6%に相当します。
IT業界全体で支援すべき
ジュニアひとり情シスは、人手不足が叫ばれるIT業界の中で果敢にもひとり情シスのキャリアを選んだ方々です。結果的には、ひとり情シスの仕事が合わず、他のITの仕事に転職される方もいます。しかし、結果的にはIT業界の人口を増やすことになりますので、ジュニアひとり情シスは挫折せずIT業界で成長してほしいものです。
取っつきにくい情シスの仕事ですが、さまざまな分かりやすい有益な書籍が増えたり、勉強会やコミュニティーを主催してくださる方も多くなって活動も盛んになっていたりするので、以前と比べてとても環境がよくなっているという声も聞きます。ITベンダーも自社のソリューションに誘導する提案だけをするのではなく、役立つ情報を発信してもらうことで情シスの人口増加につながり、結果的には市場が拡大するものと思われます。
ジュニアひとり情シスが苦労しているのは否めませんが、その58.7%がひとり情シスの仕事にやりがいを感じているのも事実です。この気持ちに応えてその成長を支援していくことが、多くの後身をIT業界に呼び込むことにつながるものと確信しております。
- 清水博(しみず・ひろし)
- ひとり情シス・ワーキンググループ 座長
- 早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わり、米ヒューレット・パッカード・アジア太平洋本部のディレクターを歴任、ビジネスPC事業本部長。2015年にデルに入社。上席執行役員。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。中堅企業をターゲットにしたビジネスを倍増させ世界トップの部門となる。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。2020年独立。『ひとり情シス』(東洋経済新報社)の著書のほか、ひとり情シス、デジタルトランスフォーメーション関連記事の連載多数。