2017年の春、当時43歳だったEndrus Arge氏は、病気で自らが約20年前に創業したオフィス家具会社をしばらく休んだ。
Silen Spaceは、未来のオフィスはモジュール型になると考えている。
提供:Silen Space
自宅で療養していたArge氏は、今までのオフィス環境を改善できないかとブレーンストーミングを始めた。Arge氏はオフィス空間には柔軟性が足りないと感じており、特にミーティングスペースについてはその傾向が強いと考えていた。同氏は、固定されたミーティングルームの代わりになるものがあるとすれば、オフィスのどこにでも置ける、必要なだけのプライバシーと便利さを提供できるモジュール型のミーティング用防音ブースだろうと考えた。
このアイデアが「Silen Space」のもとになった。「私はこのアイデアをスケッチに起こすと、その数日後にオフィスに戻り、部下のチームにそれを披露した。そこからアイデアが加速した」と同氏は語った。
1年間の研究開発を経て、Silenは最初のミーティング用ブースを2018年の秋に発売した。同社のブースは、発売して間もなく出展した国際フェアの1つで、将来米国におけるSilenの販売代理店になる企業の目に止まった。
またストックホルムで開催されたフェアでは、身なりの良い参加者がSilenの販売担当者の方に近づいてくると、いきなり、防音性能を測ってみたいので試させてもらえないかと頼んできた。その参加者は実はSpotifyの従業員で、その翌日にSilenの出展エリアを再び訪ね、その場にあったサンプル用ブースを全て買い上げていった。
そして今日では、SilenのブースはSpotify、Airbus、Amazon、Bolt、Coca-Cola、EY、Lego、Maersk、P&G、Porsche、Volkswagenなどのオフィスで使われている。
エストニア企業であるSilenの製品ラインアップには、個人用に設計されたブースから、12人でミーティングできる3つのモジュールを結合した製品まで、4種類の製品が用意されている。
Silenの主な設計目標の1つは、公共スペースでプライバシーとセキュリティを確保しながら働けるブースを作ることだ。同社のブースは、内側から外側は見えるが、外側から中は見えないようになっており、通りがかりの他人にのぞき見されることはない。また防音性能も競合他社より優れており、同社によれば、ポッド内のノイズは外部よりも最大で43dB小さくなるという。
コロナ禍によって世間の働き方に対するアプローチは劇的に変わっており、人々が従来のオフィス以外の場所で働く時間が増えている。Arge氏は、Silenのモジュール型ミーティングブースは、その新たな現実がもたらす課題に対応するのに適した製品だと考えている。
毎朝オフィスに足を運ぶよりも、最近になって普及した、どこでも働けるハイブリッドな働き方の方が優れているというのがArge氏の考えだ。同氏は、今後は労働者がその時にいる場所で、ミーティング用ブースとワークステーションを使って働くことが増えると予想している。それは例えば、カフェテリアやレストラン、ショッピングモールなどの公共スペースかもしれない。