テクノロジー業界のどこに資金が向かっており、何兆ドルものIT支出が実際にどこに行き着き、最終的にどんな形になっているかを把握するのはこれまでも難しかった。
その理由の1つは、多くの場合、IT支出が向かう先を見ることができないからだ(これは文字通りの意味だ)。かつて、IT投資の結果は、謎の地下室やほとんど訪れる人がいないデータセンターに置かれたサーバーの形を取って、人の目から隠れたところに置かれていた。
現在も、企業がハードウェアにこだわり続けているケースは少なくなっているとはいえ、IT支出の行き先が見えないところにあるという点では変わりはないかもしれない。IT支出の多くはクラウドコンピューティングに費やされているが、これは、資金の向かう先が、さらに訪れる人が少ない他人のデータセンターの中に隠されていて、見えないことを意味している。
それにも関わらず、多くの企業の経営陣は、この18カ月でテクノロジーの力と重要性を理解するようになった。これは、オフィスで働いていたスタッフの大半を速やかに在宅勤務に切り替える上で、テクノロジーが大きな役割を果たしたからだ。企業は、コロナ禍の中でも事業を継続できるように業務プロセスやビジネスモデルさえ見直したが、テクノロジーはその際にも役立った。
米ZDNetが2022年のIT予算に関する各種の調査を詳細に分析した記事でも明らかになったとおり、経営陣がITの力を理解したことで、今後のIT予算は増加する可能性が高い。
IT分野が専門の調査会社であるGartnerによれば、2022年のIT支出は、前年比5.3%増の4兆4000億ドル(約490兆円)にも達するという。これは多くの企業が、デジタルトランスフォーメーション計画を推進するべく、新たな「構築」フェーズに入るためだ。
では、その支出はどこに向かっているのだろうか。多くの予算は依然として、アプリケーション(SaaS)とクラウドインフラの2つの分野で、クラウドコンピューティングに支出されると予想されている。また最高情報責任者(CIO)は、データアナリティクスにも多くの資金を投じる予定だ。もっとも、データアナリティクスは、この数年常に優先順位が高い項目として挙げられ続けている。これは、顧客に関する情報をいくら集めたところで、それを有益なデータに変えられなければ意味がないからだ。
また、最高情報セキュリティ責任者(CISO)が取締役会を説得することができれば、ITセキュリティに関する支出も大幅に増加する可能性もある。
ハードウェアやソフトウェアのことはさておき、人的要素についてはどうだろうか。ITに対する熱意が新たに盛り上がっているこの状況は、技術者の雇用機会の改善やITプロフェッショナルの収入の増加につながるのだろうか。
この分野についての見通しは、それほどはっきりしていない。この10年間は、自動化の進展と、特にクラウドコンピューティングの台頭によって、ITスタッフの頭数はそれほど大幅には増えなかったとみられている。このため、多くの企業がIT部門の規模を拡大する意向を示しているのは、今後の景気回復を反映したものだといえるだろう。
結果として賃金が上昇するかもしれないし、少なくとも、在宅勤務などの問題に関する開発者の交渉力は確実に高まるだろう。
このように、今後もIT投資の結果すべてを物理的に目に見える形で示すことは難しいだろうが、CIOはデジタルトランスフォーメーション推進の旗振り役として強い立場にある。今の企業の経営陣は、テクノロジーの重要性を理解しており、支出を惜しまない構えだといえそうだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。