IT部門はこの1年間、コロナ禍を切り抜けるために休むことなく企業を支えてきたが、これからの数カ月間はまた別のことで忙しくなりそうだ。Gartnerによれば、2021年の世界的なIT支出は、企業によるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進によって増大し、前年比9%増の約4兆2000億ドル(約440兆円)に達するという。
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同社は、2020年以降もデータセンターシステム、エンタープライズソフトウェア、デバイス、ITサービス、通信サービスへの支出が加速度的に増加すると予想している。経営者は、コロナ禍によって在宅勤務を強いられた従業員を支えるために、新しい技術に多額の投資を行わざるを得なかったが、そこで立ち止まることなく、今後もITへの投資を増やしていこうとしている。
これは優先順位が変化しているためだ。最高情報責任者(CIO)が2021年に向けて設定した新たなゴールを達成するには、IT予算を増やす必要がある。2020年の企業はサバイバルモードにならざるを得ず、DXプロジェクトを短期間で実行しなければならなかったが、2021年にはもっと長期的な枠組みを持った大きな取り組みを進めることになる。
Gartner 調査担当バイスプレジデントのJohn-David Lovelock氏は、米ZDNetの取材に対して「2020年には事業をそのままの形で継続することに焦点が置かれていた」と述べた。「しかし2021年には、2021年以降の現実に合わせてビジネスのやり方を変え始めることが重視されている。多くの企業は、時間枠を広げてより長期的なプロジェクトを検討している」
従業員は、在宅勤務からさらに進んで、どこでも働ける環境を求めるようになっている。それにはスタッフを支えるためのメンタルヘルスや身体的な健康を管理するアプリケーションも必要だろうが、デバイスの更新も必要になる可能性がある。
コロナ禍で最も危機的な状況だった頃には、従業員にオフィスの隅に転がっていた4年前のノートPCを与えることが最善の選択肢だったかもしれないが、2021年には、在宅勤務に使用する機器に求められる水準も高くなる。
Gartnerによれば、2021年には企業のデバイス(PC、ノートPC、タブレット、スマートフォンなど)に対する支出の増加幅が過去最高水準になると予想しており、デバイス関連支出は前年比14%増の約8000億ドル(約88兆円)近くに達するという。
しかし2021年のIT部門は、単に前年から進んでいるDXのトレンドを継続するだけでなく、競争の激しい市場環境の中で事業を差別化し、より多くの収益を生み出せる全く新たな技術に投資するようになるとLovelock氏は予想している。