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ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」

第16回:DX推進の大きな障壁--社外のステークホルダーとのギャップを埋める最善策

取材・構成=翁長潤

2021-07-08 06:00

 本連載は、元ソニーの最高情報責任者(CIO)で現在はガートナー ジャパンのエグゼクティブ プログラム グループ バイスプレジデント エグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏が、ガートナーに在籍するアナリストとの対談を通じて日本企業のITの現状と将来への展望を解き明かしていく

 今回のテーマは、IT部門が投資家などの社外のステークホルダーと、どのように良好な関係性を構築するかだ。近年、多くの企業が取り組んでいるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、単なるIT活用の促進とは異なる意味合いを持つ。今回は、DXが企業価値を高める重要な意味を持つ理由、また、それをどう社外のステークホルダーに示していくかを山野井聡氏に聞いた。

企業価値を高める重要要素となった「デジタル化」

長谷島:ガートナーでのポジションについてお話ください。

山野井:私のポジションはチーム・マネジャーで、厳密にはアナリストではないのですが、最近でもITやデジタル戦略の立案に関するCIO(最高情報責任者)やITリーダーのお客さまのご相談には直接お応えするように務めています。今日は、むしろその経験をもとにお話ができれば良いかなと思います。

長谷島:企業価値の形成においてDXへの取り組みが重要になる中で、IT部門にはこれまで以上に幅広い役割が期待されている状況だと思いますが、IT部門にとっての新たなチャンスと捉えて、前向きに対応してほしいですね。経営貢献という意味でIT部門の新たな価値創出につながると思っていますが、まずはDXを取り巻く状況についてお聞かせいただけますか。

山野井:ここ数年、ご縁があって経済産業省のさまざまな会議にメンバーとして参加する機会を頂戴しました。例えば、デジタル技術による社会変革を踏まえた新たなIT戦略の策定方針・基準を整理した「デジタルガバナンス・コード」の策定や、民間企業のDXの取り組みを評価する「DX認定制度」の制度設計などにも携わってきました。

 また、以前は「攻めのIT経営銘柄」と言われていた「DX銘柄」の選定委員も毎年担当させていただいております。一連の施策に通底しているのは、「経営者は外部のステークホルダー、つまり投資家に対して、自社のデジタル戦略やDXの取り組みを積極的に開示すべき」という提言です。

山野井聡氏
ガートナー ジャパン リサーチ&アドバイザリ部門 マネージング バイス プレジデント
アクセンチュア、データクエスト ジャパン (現ガートナー ジャパン)、ドイツ証券を経て、2004年10月より現職。プレイング・マネジャーとしてチームを統括しつつ、日本企業のソーシングとITサービス・ベンダー管理に関するアドバイスと提言を行っている。

 なぜかというと、デジタル戦略に投資家が注目し始めているからです。多くの投資家は、企業の収益性や将来性をもとに企業価値の持続的な成長力を判断材料として重視すると思います。そして、中長期の成長力を図るには、B/S(貸借対照表)、 P/L(損益計算書)などの財務情報とともに、非財務情報に注目する流れが、グローバルで当たり前になってきています。

 非財務情報は、文字通り「財務データ」以外の情報で、例えば、経営ビジョンやビジネスモデルや組織/人材、知財などさまざまです。ここ10年なら、「ESG(環境、社会、ガバナンス」への取り組みでしょう。実際に経済産業省は、非財務情報を積極的に開示するガイダンスをとりまとめていますし、金融庁もコーポレートガバナンスを強化していく動きを見せています。

 「カーボンニュートラル」に象徴されるように環境対応への企業のコミットメントを求める圧力も増しています。こうした変化の中で、企業におけるITやデジタル技術の活用もまた、重要な非財務情報の一つとして取り上げられるようになりました。特に昨今の「DX」流行りの中で、新しいビジネスモデルや持続的な収益を生み出す「仕組み」としてITやデジタル技術の活用に投資家が期待するのは、自然な流れと思います。

 長谷島さんが言われるように、DXを推進するCIOやIT部門リーダーにとって、この変化は経営への貢献をアピールできるチャンスになるでしょう。投資家がそこに注目する以上、それが、なかば「外圧」となって経営者が真剣に取り組まざるを得ないという側面もあります。企業価値の持続的成長に貢献できるDXを策定・実施できれば、確実にCIOやITリーダーの社内での存在感が高まるでしょう。

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