Gartnerによると、2021年に最高情報責任者(CIO)らが戦略的に重視すべきテクノロジーは、「挙動のインターネット(Internet of Behavior:IoB)」「トータルエクスペリエンス」、自動化、人工知能(AI)エンジニアリングなどだ。
Gartnerは自社カンファレンス「Gartner IT Symposium/Xpo」をオンラインで開催し、同社が今後重要だと考える戦略的テクノロジーのリストを紹介した。そのテーマは「可塑性」(条件の変化に適応する能力)だ。Gartnerが選んだ重要戦略テクノロジーのリストは明らかに、新型コロナウイルスが蔓延して、企業がにわかにデジタル化を進めなければならなかった経験の影響を受けたものになっている。
Gartnerが発表した2021年のトレンドリストにはバズワードもかなり含まれているが、ここに紹介されているテクノロジーのリストそのものが、1つの物語を形作っている。以下では、同社が予想したトレンドを紹介しながら、一言ずつコメントしていきたい。
挙動のインターネット(Internet of Behavior、IoB)。IoBとは、位置情報トラッキングや顔認識技術などの個人を追跡する技術を組み合わせてそのデータをつなぎ合わせ、購買行動やデバイスの利用などの人間の行動イベントと結びつけるものだ。同社によれば、2025年には、世界人口の半数が1つ以上の民間あるいは政府が展開するIoBプログラムの対象になるという。
このIoBの話が不気味に聞こえるとしたら、その理由は、実際に不気味だからだ。IoBは技術的には実現可能だが、倫理的、社会的な議論が今後出てくるとGartnerは述べている。同社が言う議論についての主張は的を射ているが、IoBのトラッキングに関する部分の多くは、すでに世の中に入り込んでしまっている。私たちはこれを受け入れることになるだろう。プライバシーに関して言えば、私たちは今まさにゆっくりと「ゆでガエル」にされているところだ。
トータルエクスペリエンス(Total Experience、TX)は、顧客体験(CX)、従業員体験(EX)、ユーザー体験(UX)を組み合わせたものだ。これらをつなぎ、すべての関係者に対し、全体的により優れた体験を生み出す。Gartnerは、これらの体験は今後分散型の組織にとって極めて重要なものになり、TXを後押しする企業は、あらゆる面で満足度を高めることができると述べている。
TXの議論にはもっともな部分もあるが、筆者はあらゆるものに「体験」要素が盛り込まれることが望ましいとはあまり思っていない。筆者はすでにUX疲れとCX疲れを感じている。