コロナ禍で前例のない対策が求められた東京五輪--パナソニックはどう支援したか?

末岡洋子

2021-10-16 07:00

 「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」(東京大会)は、大会そのものの延期や「有観客か無観客か」の方針転換、コロナ感染対策、過去最多の種目数など異例ずくめだった。ワールドワイドパートナーとして技術を提供したパナソニック コネクティッドソリューションズ社が、大会を支えた技術と現場での支援を振り返った。

セキュリティカメラとセンサーによる映像監視、ウェアラブルカメラを初導入

 パナソニックがオリンピックのワールドワイド公式パートナーとなったのは1987年、2014年からはパラリンピックのワールドワイド公式パートナーも務めている。

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 パナソニック コネクティッドソリューションズ社(2022年4月からパナソニック コネクト)は、今回の大会で「セキュリティ」「映像・音響機器」「PC」の各分野で技術・現場を支援した。

 セキュリティでは2006年のトリノ大会からセキュリティ機器を納入してきた。これまで累計1万6000台のセキュリティカメラを導入するなど、経験やノウハウを蓄積してきたが、東京大会は大きく2つの難しさがあったようだ。

 1つ目は、スタジアムや選手村が集まる「オリンピックパーク」が存在しないこと。会場は各地に点在し、しかも生活圏と隣接している。そのため、会場ごとに強固なセキュリティを構築し、他会場と情報を共有した。2つ目は、新競技のサーフィンなど海辺と隣接する会場が多かったこと。広範囲にわたる海辺での警備が必要だった。

 パナソニック システムソリューションズ ジャパンで東京オリンピック・パラリンピック推進プロジェクト セキュリティ推進部門 統括を務めた前田雄司氏は、「点在する会場を広域に守る必要があり、監視や警備への負担が多かった」と振り返る。

パナソニック システムソリューションズ ジャパン 東京オリンピック・パラリンピック推進プロジェクト セキュリティ推進部門 統括の前田雄司氏
パナソニック システムソリューションズ ジャパン 東京オリンピック・パラリンピック推進プロジェクト セキュリティ推進部門 統括の前田雄司氏

 ベニュー(施設)は合計48カ所あり、合計8000台のセキュリティカメラ(既設1000台、7000台は大会のために設置)、2500台のセンサーを連動させて全会場を統合監視できるシステムを構築した。

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 センサーが異常を感知するとカメラが連動して該当の場所を自動で映し出すようにし、監視している警備員がすぐに事象を把握できるようにした。ウェアラブルデバイスの導入も今大会が初めて。会場内で事案が発生したときは、ウェアラブルカメラを装着した警備員が現場に行き、映像で現場状況を把握できるようにした。

 課題だった広い海辺の監視には気球を使った。高解像度のカメラを気球に設置して海上を飛ばして上空から監視し、危険を察知すると指揮所に連絡が行くという仕組みだ。

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 映像による監視システムは、大会警備に関わる各種システムとの連携、治安機関との連携など、大会警備の中核となったという。

 パナソニックは設計、施工・設置、保守を一貫してサポートしたが、これまでの大会のようにはいかなかったようだ。例えば、設計ではマラソン会場の変更や新型コロナウイルスの感染動向に伴う会場のレイアウト変更があり、柔軟な対応が必要だったという。施工・設置はわずか2カ月で行う必要があった。品質を維持すべく、プレパレーション(準備)センターを稼働させ、事前に全ての機材のキッティングや施設ごとの動作検証を徹底した。これにより、現場の作業量を削減し、品質を高く維持することができたという。

 保守運用フェーズでは、運用担当が短期間でシステムを理解して操作技術を上げられるように、2段階の教育を計画的に実施してスムーズに運用監視できるようにサポート。大会期間中は24時間体制で待機し、30分で現場に駆けつけられるようにしていたという。

 なお、設計時に短期間での調整や正確な検知が求められたことから、人工知能(AI)や深層学習などの技術は用いず、センサーを利用したという。

 「落雷、ゲリラ豪雨などの影響や想定外の事象も発生したが、迅速な対応ができ、無事に大会を終えることができた」と前田氏は述べ、「技術力と現場力」を強調した。

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