本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、Microsoft 会長 兼 CEOのSatya Nadella氏と、ヴィーム・ソフトウェア 執行役員社長の古舘正清氏の発言を紹介する。
「私たちの社会のDXはメタバースによって新たなステージに移行する」
(Microsoft 会長 兼 CEOのSatya Nadella氏)
Microsoft 会長 兼 CEOのSatya Nadella氏
米Microsoftがこのほどオンラインで開催した企業向けのプライベートイベント「Microsoft Ignite」の基調講演でスピーチした同社 会長兼CEO(最高経営責任者)のSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は、仮想空間「メタバース」に本格的に取り組む姿勢を示し、メタバースがもたらすインパクトについて冒頭のように語った。
メタバースと言えば、旧Facebookが先頃この分野に本格的に取り組むことを表明し、社名も「Meta」に変更して話題を呼んだばかりだが、今回のイベントでMicrosoftも本格参入を表明したとあって、一気にバズワードとして広がったようだ。
Microsoftは今回のイベントで、同社のクラウドサービス「Microsoft Cloud」の主要なサービスについて数多く機能強化を発表したが、そのほとんどがメタバースとのつながりに関連する内容だったというのが筆者の印象だ。
ここでは、Nadella氏がメタバースについて語った中で、筆者が興味深かった内容を挙げておきたい。まずは、メタバースとは何かについて、同氏は次のように述べた。
「メタバースは物理的な世界とデジタルの世界を横断した共有体験を実現できる。例えば、企業が自社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中で、メタバースは人々がデジタル環境で出会い、アバターを使って会議をより快適に行い、クリエイティブなコラボレーションをグローバルで促進できるように支援することができる」
昨年来、新型コロナの影響でリモートワークが急拡大し、今後のニューノーマル時代においてもハイブリッドワークが中心になるとみられているが、そんなトレンドがメタバース実現への期待を一気に高めた印象だ。
もう1つ、Nadella氏がスピーチの中で掲げた1枚の表を紹介しておきたい。表1に示したのは、同氏が「メタバースを構成するソリューション」としてレイヤーごとに挙げたサービスである。ご覧の通り、全てがMicrosoft Cloudのサービスだ。同氏は、「Microsoft Cloudがメタバースを実現するための包括的なリソースを提供する」と強調した。
表1:Nadella氏が説く「メタバースを構成するソリューション」(「Microsoft Ignite」の基調講演より)
Nadella氏はスピーチの最後をこう結んだ。
「メタバースというのは、仮想空間における社会というだけでなく、そこに参加する私たちそれぞれの社会への関わり方についても、これまでにないさまざまな選択肢を与えてくれるのではないか。そうした社会との新しい関わり方について、これからみんなで考えて創り上げていきたい。今、Microsoftからお見せしているメタバースは、新しい社会への可能性のまだほんの一部だと考えている。ぜひ、多くの皆さんのご協力をお願いしたい」
メタバースの時代もMicrosoftが力強くリードしそうだ、と感じさせられたNadella氏のメッセージだった。