Salesforce.comの日本法人セールスフォース・ドットコムは11月5日、「中堅・中小企業向けトレンドレポート」の第5版を発表した。新型コロナウイルス感染症のパンデミック環境下での中小企業における従業員や顧客の信頼を獲得するための取り組み、デジタル活用、地域コミュニティーや行政の中小企業への支援の影響を明らかにしている。
レポートによると、パンデミックが継続する中、従業員は、会社に期待することとして、柔軟な勤務体制(51%)、職場でのマスク着用(47%)、職場での備品や機器をこまめに消毒(45%)、職場でソーシャルディスタンスを確保(44%)、リモートワーク体制の整備(44%)を挙げており、職場での安全措置、柔軟な業務スケジュールや職場環境を求めていたことが分かるという。
これに対し、業績好調な中小企業は、従業員の信頼を得るためにアクションを起こしているとレポートは述べる。透明性があり、共感を生むエンゲージメントを従業員に対して行うとともに、従業員にフィードバックを求め、それに対応したという。
従業員の信頼を獲得するために取られたアクションとしては、透明性のあるコミュニケーションを行う(51%)、個人のニーズに対応する(42%)、フィードバックを求める(40%)、コラボレーションの機会を作る(32%)、自立を許可する(30%)などが挙がっている。
(出典:セールスフォース・ドットコム)
レポートは、中小企業の大半は備えのないままパンデミックとその経済的な影響に直面し、多くがデジタル化を余儀なくされたとし、「オペレーションの一部をオンラインに移行した」と回答した中小企業は世界で95%、日本で94%となっていることを明らかにしている。
企業はデジタル化を進めることで顧客の安全と利便性を確保し、顧客との信頼関係を構築、維持することに尽力したとレポートは指摘。また、変化する世界において従業員とコミュニケーションをとりながら、安全に協働し、売り上げを伸ばす環境づくりにも対応しなければならなかったと続ける。
世界の中小企業の71%が「デジタル化によってパンデミックを切り抜けた」と回答。「10年前の技術ではパンデミックを生き抜くことはできなかっただろう」と回答したのは世界で66%、日本で42%となっている。
日本の中小企業においては、次のようなデジタル活用の傾向も明らかになっている。
- 半数(49%)が過去1年間にオンラインプレゼンスを強化
- 42%は長期的に非接触型サービスの提供を計画
- ビジネスオペレーションをオンラインに移行した理由のトップ3は、リモートワークの従業員をサポートするため、安全に顧客に対応するため、顧客の利便性を向上させるため
- 顧客の期待に対応するためのチャレンジのトップ3は、ニーズへの対応、こまめなコミュニケーション、カスタマーエンゲージメントのパーソナライズ
世界では69%、日本では56%の中小企業が「企業がパンデミックを生き抜くには地域コミュニティのサポートが重要だった」と回答。世界では67%、日本では63%が「自治体、政府の支援は役に立った」と答えている。
中小企業はパンデミックを受けた新しい環境で事業を継続するとともに、サプライ用品の購入や従業員への給与支払いなど事業を維持する上で欠かせないルーティン業務を実施する必要があり、地域コミュニティと自治体、政府の援助は、中小企業の事業継続を下支えしたとレポートは述べている。
パンデミックは中小企業の事業計画や人事慣習に長期的な影響を与えることが見込まれているという。世界では75%、日本では56%の中小企業が「過去1年間に実施したビジネスオペレーションの変革には長期的なメリットがある」と考えている。例えば、中小企業の大部分は非接触型のサービスを永続的に提供する計画を示しているという。
また、パンデミック以前と比べて、シナリオプランを立てる傾向があることが分かったとレポートは述べる。世界の中小企業の70%が、「今後何が起きても対応できるように、将来の危機に備えるシナリオプランを作成済みである」と回答。中長期の勤務形態の計画については、日本の中小企業の43%は「対面を中心とした勤務形態」、34%は「リモートワーク」を計画しており、残りの23%は「まだ決定していない」と回答している。
同レポートは、北米、南米、ヨーロッパ、日本を含むアジア太平洋地域にある2500人以上の中小企業の経営者およびリーダーを対象に、2021年6月から7月にかけて実施されている。
(出典:セールスフォース・ドットコム)