オブザーバビリティー(可観測性)プラットフォームを提供するNew Relicは9月16日、中堅中小企業に向け、小規模でもエンタープライズレベルのオブザーバビリティーを実行可能にする支援施策を発表した。
New Relicによると、同社の調査から、世界に比べ、日本企業ではオブザーバビリティーの浸透に課題があることが明らかになったという。日本企業においてオブザーバビリティーへの理解が進まない背景として、エンジニアが気軽に習熟できないといった、オブザーバビリティーの普及に向けた課題があると同社では結論づけた。
日本の中堅中小企業がより容易にオブザーバビリティーを獲得し、習熟できるようにするため、今回の施策は、オブザーバビリティープラットフォーム「New Relic One」利用モデルの変更、中堅中小企業向けライセンスの提供、学習モデルの体系化と無償提供の強化という3つの柱で構成されている。
New Relic Oneの利用は、これまでのフリートライアルモデルからフリーティアモデルへと変更される。フリートライアルモデルでは、2週間のみ無償利用が可能だったが、フリーティアモデルでは、1ユーザーならばNew Relic Oneの全機能が制限なく利用可能になり、取り込むデータ収集量が100GB/月を越えなければ料金は実質的に無期限で無償となる。
フリーティアモデルの想定ユーザーは、設立まもなく、資金に余裕のないベンチャー企業やスタートアップ、エンジニアを自社で抱えられず外注に多くを依存し、予算に余裕のない中堅中小企業など。これらの企業に対して、初期投資ゼロでオブザーバビリティーを提供したいとNew Relic代表取締役社長の小西真一朗氏は説明する。
(出典:New Relic)
中堅中小企業向けライセンスとして、月額3万8400円(税抜き)で4ユーザーまで、データ収集量が月間333GBまで利用可能なプランが提供される。New Relic Oneの全機能が利用でき、大規模ユーザー同様に日本語でのフルサポートが受けられる。アイレットとのパートナーシップを通じ、中堅中小企業向けには月額5万円から始められる導入支援サービスも発表されている。
このライセンスにより「少なくともコストが理由でオブザーバビリティーが進まないといった状態は解消できるのではないかと考えている」と小西氏は話す。
このように製品の利用が容易になっても、使い方そのものが分からない、実務にのっとった学習コンテンツが整っていないといった場合、技術を習得できずに終わってしまう可能性がある。
そこで、学習モデルの体系化と無償提供の強化に向けた取り組みも進んでいる。New Relic Oneの利用がすぐに始められる環境を整えるため、インストールウィザードやインストールガイド、製品ドキュメントを日本語で提供し、入門者向け書籍も発表している。
日本語のトレーニングも受講者の関心や習熟度レベルに合わせたさまざまな無償コースが定期開催されている。現在公開されている日本独自の学習コンテンツは1000分以上で、過去2年間に実施したトレーニングは有償換算すると2億5000万円以上に相当。小西氏によると、オブザーバビリティーエンジニアの育成を長期的な投資として捉えていることから、無償で全て提供しているという。
また、ISUCONへのライセンスや技術サポートの無償提供といったコミュニティーへの貢献に加え、ユーザー同志のナレッジ共有を促進させるためにユーザーグループが15日に発足されている。
フリーティアモデルは既に利用可能となっており、中堅中小向けライセンスの価格体系は16日から提供されている。日本語学習コンテンツの増強は10月から順次提供を開始する予定となっている。